JWST、鏡が揃って試験観測の結果は上々
【2022年3月25日 NASA】
昨年12月に打ち上げられたNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の主鏡の直径は6.5mもあり、そのままではロケットに搭載できない。そこで、六角形をしたベリリウム製ミラーセグメントに18分割の上、折りたたまれた状態で宇宙に送り込まれた。JWSTは主鏡などを展開しながら2月にラグランジュ点L2付近の最終軌道に入り、ミラーセグメントの向きを調整する作業が続けられていた。
3月11日に、ミラーセグメントの向きの誤差を測定して微調整を行う作業が完了した。JWSTチームは、全ての光学パラメーターが期待通りかそれ以上の性能を発揮していることや、望遠鏡の光路を遮るものがないことを確認している。これでJWSTでは、主要な撮像装置である近赤外線カメラ「NIRCam」と望遠鏡の鏡が完全に連携するなど、光学系動作に関わる重要な段階が完了した。
「私たちは望遠鏡の全ての鏡を星に向けて焦点を合わせましたが、仕様を上回るほどのパフォーマンスを発揮しています。これが科学において意味することを考えるとワクワクします。私たちは作るべき望遠鏡を作ったのだと確信できます」(JWST光学望遠鏡要素副責任者 Ritva Keski-Kuhaさん)。
また、JWSTの新たな「自分撮り」画像も公開された。同画像は、今年の2月に公開されたものと同様に、主鏡のミラーセグメントを撮影できるように設計されているNIRCam内の特別なレンズを使って得られたものだ。今回は、18枚のミラーセグメント全てが、同じ星から一斉に光を集めていており、明るく輝いている。
今後JWSTチームは5月上旬までに、残りの調整作業を完了させる予定だ。その後は約2か月間かけて、科学観測機器の準備が行われる。JWSTの初観測画像や初科学観測データがリリースされるのは今夏となる。
〈参照〉
- NASA:NASA’s Webb Reaches Alignment Milestone, Optics Working Successfully
- ESA:Webb reaches alignment milestone
〈関連リンク〉
- NASA - James Webb Space Tepescope:
- STScI:
- 星ナビ.com:
関連記事
- 2024/03/18 ハッブル定数の食い違い、JWSTの観測でも裏付けられる
- 2023/08/07 JWSTがとらえたリング星雲
- 2023/01/27 銀河中心から外れた位置に見つかった巨大エネルギー源
- 2023/01/20 宇宙初期の銀河の大きさと明るさの関係
- 2022/12/21 JWST、生まれたての星を取り巻く有機分子をとらえる
- 2022/12/09 JWSTの画像に写っていた「赤い渦巻銀河」
- 2022/10/26 JWSTによる「創造の柱」の新しい描像
- 2022/10/17 連星のダンスで生み出された17重のダストリング
- 2022/09/29 JWST、海王星の環や衛星を撮影
- 2022/09/08 JWSTが系外惑星を初めて直接撮影
- 2022/08/09 最遠銀河の候補をJWSTが撮影、赤方偏移16.7
- 2022/08/05 JWSTが車輪銀河を撮影
- 2022/07/14 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初成果
- 2022/05/10 JWSTの最終調整完了、科学機器の試運転へ
- 2022/02/21 JWSTが主鏡調整用に恒星を初撮影
- 2022/01/26 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が最終軌道に到達
- 2022/01/13 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、主鏡などの展開完了
- 2021/12/27 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、打ち上げ成功
- 2017/11/17 JWSTの初期科学観測ターゲットが明らかに
- 2014/01/27 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、最終設計審査に合格