宇宙初期の銀河の大きさと明るさの関係
【2023年1月20日 カブリIPMU】
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測開始から最初の約1年間には、観測データがすぐに公開されて誰でも解析を行える「早期リリース科学プログラム(ERS)」という観測プロジェクトが13件行われている。
このERSの一つに、ちょうこくしつ座の方向約40億光年の距離にある巨大銀河団「Abell 2744」(通称:パンドラ銀河団)をJWSTで撮像・分光するプロジェクト「Through the Looking GLASS」がある。この銀河団は巨大な質量を持つため、遠くにある背景銀河の像が重力レンズ効果で拡大されている。この背景銀河をJWSTで観測し、宇宙で最初の星や銀河が誕生した「宇宙の再電離」の時代まで見通そうというのがGLASSプロジェクトの目的だ。
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)のLilan Yangさんたちの研究チームは、GLASSプロジェクトでJWSTの近赤外線カメラ「NIRCam」が撮影した分光撮像データを用いて、遠くの銀河の大きさと明るさの間にどのような関係があるかを調べた。
初期宇宙に存在する銀河の光は、宇宙膨張によって波長が伸びて地球に届く。宇宙誕生から数億年後の時代に存在する銀河から放出された紫外線や可視光線は、地球では赤外線となって観測される。
Yangさんたちは、赤方偏移zがおよそ7~15(宇宙誕生の約2.7~8億年後)の初期宇宙に存在する19個の明るい銀河について、銀河から放出されたときの波長が紫外線(約1600Å)から可視光線(約4800Å)に相当する5種類の赤外線で、銀河の大きさと明るさの関係を求めた。
解析の結果、この時代の銀河の典型的な大きさは半径が約1500~2000光年で、私たちの天の川銀河の20分の1ほどであることがわかった。また、放出時に可視光線だった光で観測された銀河に比べて、紫外線だった光で観測された銀河の方が、真の明るさ(絶対等級)が同じでもサイズがやや小さいことが明らかになった。
「JWSTを使い、赤方偏移が7を超える銀河について、放出時に可視光線だった光で銀河の特徴を調べたのはこれが初めてです。これまでのハッブル宇宙望遠鏡による観測では、放出時に紫外線だった光で銀河の特徴を知ることしかできませんでした。ただし、こうした観測の結果がどうなるべきかという点については、私たちはまだ何も知りません。過去のシミュレーションによる予測はかなりばらついています」(Yangさん)。
一般に、zが7を超えるような遠い銀河の明るさと大きさには、「明るい銀河ほどサイズが大きい(=銀河の半径が明るさのべき乗に比例する)」という関係があることが知られているが、今回のYangさんたちの解析によると、このべき乗関係の「傾き(べき乗の係数)」が、可視光線より紫外線の方が大きいらしいこともわかった。
「この結果は、銀河の全体の明るさが同じでも、紫外線で見える銀河の方が表面輝度が高く、より小さくコンパクトに見えることを意味するのかもしれません。つまり、初期宇宙にどのくらいの明るさの銀河が何個あるかを見積もる際に、紫外線相当の光で観測する方が見落としが少ないかもしれません。しかし、まだ結論的なことは言えません」(Yangさん)。
今後、JWSTによってこうした超遠方の銀河の観測個数が増えてくれば、よりはっきりした結果が得られるだろうと研究チームでは期待している。
〈参照〉
- カブリIPMU:ビッグバンから10億年未満の銀河の大きさと明るさの関係を測定 - GLASS-JWST の初期成果
- The Astrophysical Journal Letters:Early Results from GLASS-JWST. V: The First Rest-frame Optical Size-Luminosity Relation of Galaxies at z > 7 論文
〈関連リンク〉
- NASA - James Webb Space Telescope:
- STScI:
- GLASS-JWST:
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