丸い星が丸くない惑星状星雲を作る理由
【2020年9月25日 ハーバード・スミソニアン天体物理センター】
恒星は球形なので、そこから放出される恒星風は球対称に広がっていくように思える。誕生から長い時間が経ち中心部の水素を核融合で使い切った星は大きく膨らみ、表面温度が低い赤色の「漸近巨星分枝星(AGB星)」となって、さかんに恒星風を吹き出す。
そうして拡散した物質は、恒星が生涯を終えて白色矮星になると、その紫外線に照らされて惑星状星雲として輝く。だが、様々に美しい姿を見せる惑星状星雲の形状は複雑で、恒星風が球対称に吹いていたのでは説明できない。
ベルギー・ルーベン・カトリック大学のLeen Decinさんたちの研究チームはアルマ望遠鏡を使って恒星風の広範囲な観測を行い、惑星状星雲の形状の形成と恒星風との関係性を調べた。「恒星風は、惑星状星雲と同様に様々な形をしています。円盤や目玉のような形のもの、らせん状や孤を描いているような形のものもあります」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理センター Carl Gottliebさん)。
研究チームは、恒星風の形が決してランダムに作られるのではないことにすぐに気づいた。低質量の星や大質量の惑星が伴星としてAGB星の近くに存在することで、恒星風の形やパターンに影響を及ぼしていたのだ。「ミルクを加えたコーヒーをスプーンで混ぜると渦巻き模様ができるように、伴星がAGB星の周りを回転しながら物質を取り込んで恒星風の形ができるのです。私たちが取得した全ての観測結果は、伴星の存在によって説明できます」(Decinさん)。
さらに、太陽が将来どのようになるかという予測も示された。「シミュレーションによれば、太陽がAGB星になると、木星と土星の影響で恒星風の中に緩い螺旋構造ができると考えられます」(Decinさん)。
AGB星は惑星形成の材料となるガスや塵の主要な供給源であり、星間物質に存在するガスの約85%と塵の約35%は、AGB星の恒星風によってもたらされたものだ。「恒星風の複雑さが考慮されていなかったこれまでの星の質量損失割合の推定値は、最大で10倍も間違っている可能性があります。その複雑さを示した今回の結果は、銀河や恒星の進化に関する理解に重大な影響を及ぼすかもしれません」(Decinさん)。
〈参照〉
- CfA:Astronomers Solve Mystery of How Planetary Nebulae Are Shaped
- アルマ望遠鏡:アルマ望遠鏡、最期を迎える星が噴き出すガスを克明にとらえる
- Science:(Sub)stellar companions shape the winds of evolved stars 論文
〈関連リンク〉
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