土星状星雲の不思議な構造
【2017年10月3日 ヨーロッパ南天天文台】
「土星状星雲」NGC 7009は、みずがめ座の方向約5000光年の距離に位置する惑星状星雲だ。この愛称は、NGC 7009の不思議な形が真横から見た「土星」に似ていることに由来している。惑星状星雲という名前は、この種の天体が初めて発見された当時は星雲の形が惑星のようなほぼ円形に見えたことから付けられたもので、惑星状星雲と惑星との間には見かけの形以上の関連はない。
土星状星雲のような天体を作り出したのは、小質量の恒星である。このような星が一生の終わりを迎えると、膨張して赤色巨星となり、外層を放出し始める。放出された物質が強力な恒星風によって吹き飛ばされ、あとに残った高温の星から放射される紫外線のエネルギーを得て輝いているのが、惑星状星雲である。
ヨーロッパ南天天文台のJeremy Walshさんたちの研究チームは、チリのヨーロッパ南天天文台パラナル観測所の超大型望遠鏡VLTで土星状星雲を観測し、星雲全体に広がるガスや塵の詳細な分布図を作成した。その結果、土星状星雲には、外部のシェル構造に加えて、内部にも楕円形のシェル構造や惑星状星雲を取り囲むハローなど、多くの複雑な構造が存在していることが明らかになった。
特に興味深いのは、塵の中に見つかった波のような構造だ。塵は星雲のいたるところに広がっているが、その量が内側のシェル構造の縁では大幅に減少している。そこでは塵がどんどん破壊されているのかもしれない。
破壊を説明できるメカニズムは、いくつかある。内部のシェル構造は本質的には膨張する衝撃波であり、その波が塵にぶつかって破壊を引き起こしているのかもしれない。あるいは、通常とは異なる特殊な加熱効果が起こって塵が蒸発しているのかもしれない。
惑星状星雲内の塵の構造やガスの分布を明らかにすることは、小質量星の一生や死におけるガスや塵の役割を理解することに役立つ。また、惑星状星雲がどのようにして複雑かつ不思議な形になるのかについての理解にもつながる。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台:The Strange Structures of the Saturn Nebula
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ南天天文台
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー:NGC 7009
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