裏返しの惑星状星雲
【2018年8月21日 香港大学】
太陽程度の軽い星は一生の終わりの段階を迎えると、星の外層部を周囲に放出する。この物質が中心に残った高温でコンパクトな白色矮星によって電離され、光って見えるのが惑星状星雲だ。物質の電離度合いは、中心の白色矮星に近いほど大きくなり、遠いところでは小さくなる。
スペイン・アンダルシア宇宙物理学研究所のMartin Guerreroさん、香港大学のXuan Fangさんたちの国際研究チ―ムは2014年から、スペイン・カナリア諸島ラパルマ天文台の北欧光学望遠鏡を使って、へび座の方向約1万7000光年彼方の惑星状星雲「HuBi 1」を観測してきた。
その結果、この惑星状星雲は通常のものとは異なり、中心星に近い内部の領域はあまり電離されておらず、外側の領域のほうが電離が進んでいることが明らかになった。いわば「裏返しの」構造の惑星状星雲である。
また、この中心星は驚くほど低温で重元素が多いことや、太陽の1.1倍の質量をもつ軽い星から作られたらしいことなどもわかった。
研究チームでは、この反転構造は中心星の「生き返り」現象の結果だと考えている。スペクトルの分析によると、星雲の内側の領域は、普通ならもう質量放出が終わるはずの進化段階の終盤で星から放出された物質による衝撃波で励起されたようだ。
星の物質は冷えて塵となり、星を覆い隠す。この現象は、過去50年で星の明るさが10等級も暗くなったことからも裏付けられている。一方、中心星からの電離した光子が届かなくなり、星雲の外側では再結合が始まって中性化が進む。
「HuBi 1の裏返ったような構造と中心星の普通とは異なる性質に気づき、理由を見つけるために星雲をじっくりと調べました。その結果、中心星が、水素が少なく重元素が豊富な星へと『生き返る』ちょうどその瞬間を観測したことがわかったのです。これは白色矮星の進化では、とても珍しいことです」(Fangさん)。
HuBi 1のもととなった星は太陽程度の質量だったと考えられることから、今回の発見は、太陽の将来の予測にも関わるものと言える。「太陽もあと50億年ほどのうちに一生の最終段階に入り、HuBi 1と同じような“再生”プロセスを経るのかもしれません」(Fangさん)。
〈参照〉
- University of Hong Kong:International team discovers an inside-out nebula surrounds a ‘born-again’ star, shedding light on the late-stage evolution of the Sun
- Nature Astronomy:The inside-out planetary nebula around a born-again star 論文
〈関連リンク〉
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