惑星状星雲の中心に3時間周期の連星
【2018年10月29日 RAS】
太陽のような比較的軽い恒星は、一生の最期の段階に外層を放出して、ガスや塵からなるシェル構造を形成する。こうしたシェル構造が星からの紫外線で照らされて輝くのが「惑星状星雲」と呼ばれる天体だ。惑星状星雲の複雑な構造の形成には多くの場合、伴星が重要な役割を果たす。
そうした一例とされるのが、おおいぬ座の方向約1万4000光年彼方にある惑星状星雲「M3-1」だ。M3-1には、連星の相互作用による典型的な特徴である、明るいジェットとフィラメントが見られる。このことから、M3-1の中心星に連星が存在していることは間違いないと考えられてきた。
スペイン・カナリア天体物理研究所のDavid Jonesさんたちの研究チームは、ヨーロッパ南天天文台の複数の望遠鏡を使ってM3-1を数年間かけて観測した。そして、この星雲の中心に連星系があることを確認した。M3-1の連星はお互い非常に近づいているため区別することはできないが、片方の星がもう一方の星の手前を通過する際の明るさの変化から、連星であることがわかったものだ。連星系の公転周期はわずか3時間強で、惑星状星雲の中心に存在するものとしては最短の部類に入る。
さらにこの連星は、白色矮星と軽い主系列星のペアであることも示された。この組み合わせでは、主系列星から白色矮星へと物質が流れ込むことで「新星爆発」が起こる可能性がある。流れ込んだ物質の量が臨界に達すると激しい熱核爆発が起こり、連星系の明るさは一時的に100万倍にもなる。
「観測で得られた十分なデータから、連星について質量や温度、半径といった特徴がわかってきました。互いの星は接触しそうなほど接近しています。今後数千年のうちに新星爆発が起こるかもしれません」(ポーランド・ニコラウス・コペルニクス天文学センター Paulina Sowickさん)。
これは、現在の理論上は説明困難なものだ。なぜなら、惑星状星雲ができるころには連星はお互い非常に離れてしまい、再び近づいて新星爆発に至る相互作用が起こるほどになるころには周囲の星雲はとっくに雲散すると考えられているためだ。2007年に発見されたこぎつね座の新星は惑星状星雲の中で発生したが、M3-1を見れば、この不可思議な現象の数千年前の段階を観察することができる。
研究チームでは、新星や超新星の起源や物理的プロセスの理解に役立てるため、今後もM3-1や似たような天体の研究をさらに進める予定だ。
〈参照〉
- RAS:Ultra-close stars discovered inside a planetary nebula
- MNRAS:The short orbital period binary star at the heart of the planetary nebula M 3-1 論文
〈関連リンク〉
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