超巨星ナオスの光点が生み出す恒星風内の渦構造

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約1080光年彼方の超巨星ナオスの表面に複数の巨大な光点が存在し、恒星風の中に渦を巻く大規模な構造を作っていることが明らかになった。

【2017年10月31日 RAS

冬の星座の一つ「とも座」に輝く2等星、とも座ζ(ゼータ)星「ナオス」は、恒星の進化における超巨星の段階にある星だ。太陽と比べると質量は60倍以上もあり、表面温度は7倍も高い(4万度以上)という高温大質量星である。こうした大質量星は数が少なく、通常は連星系を成す星のうちの一つとして見られるが、ナオスは単独で存在する珍しい存在の超巨星である。

ナオスの想像図
とも座ζ星ナオスの想像図(提供:Tahina Ramiaramanantsoa)

カナダ・モントリオール大学のTahina Ramiaramanantsoaさんたちの研究チームは、カナダ・トロント大学航空宇宙学研究所のミッション「BRITE (BRIght Target Explorer) Constellation」の5機のナノ探査衛星を使って、ナオスの表面の明るさを6か月にわたってモニター観測した。同時に、地上からは恒星風の様子もモニター観測した。

「観測の結果、1.78日周期のパターンが星の表面と恒星風の両方で繰り返されていることが明らかになりました。周期的な信号は、表面に巨大な動かない光点を複数持つ星の自転を反映するものであり、この光点によって恒星風の中に大規模な渦のような構造が形成されています。恒星風に含まれる電離ヘリウムが発する特定の波長の光を調べたところ、光点によって恒星風内に誘発された、星と共に自転し相互作用する領域『CIRs(co-rotating interaction regions)』から伸びる腕が描くS字模様がはっきりとみられました」(Ramiaramanantsoaさん)。

研究チームは1.78日周期に加えて、ナオスの表面で数時間単位で起こるランダムな明るさの変化も検出している。これは、星から外へ向かって移動する恒星風内に存在する、高密度で小さな領域のふるまいと密接な関係にあるようだ。

「実にエキサイティングな結果です。星の表面の変化と恒星風内の高密度領域という、どちらも本質的にランダムな両者の間にある直接的な関係を示す証拠を、初めて発見したのです」(モントリオール大学 Anthony Moffatさん)。

高温大質量星の表面の変化と恒星風の変化との関連性は数十年間謎のままだったが、BRITE Constellationのナノ衛星による観測とアマチュア天文家からの協力を受けた今回の研究は、大質量星の研究における重要な発見となった。光点の物理的な起源やランダムな明るさの変化の理由は今後の調査課題であり、謎の解明には小さなものを含め世界中の天体望遠鏡や衛星観測が必要になるだろう。