原始星円盤の形成初期に存在するリング、惑星の早期形成を示唆

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リング構造を持つ原始星ですでに惑星形成が始まっている可能性がシミュレーションと観測結果から示された。惑星は従来のシナリオよりもずっと早く、原始星と共に作られ始めるのかもしれない。

【2021年1月28日 理化学研究所

誕生したばかりの原始星の周りには多くのガスや塵が存在する。ガスや塵は原始星に向かって落下し、中心まで到達できなかった物質は原始星の周りで回転する「原始星円盤」を形成する。この円盤の中で塵同士が付着し大きくなっていくと、最終的に惑星が作られると考えられている。

これまで、新たに円盤に落下してくるガスや塵がなくなった後で惑星が作られると考えられてきたが、できたての若い原始星円盤であっても、惑星形成の始まりや惑星誕生の可能性を示すリング構造やらせん状構造が見られることが近年の観測で明らかとなってきた。つまり、従来の説よりもずっと早い段階における惑星形成の開始を考える必要がある。

理化学研究所の大橋聡史さんたちの国際共同研究グループは成長途中にある原始星円盤にリング構造を持つものが存在することに着目し、この構造の起源や惑星形成との関連を調べた。

まず、塵のサイズが大きくなり成長することでリング構造が作られるというメカニズムの可能性に基づいて、塵同士の付着成長のシミュレーションを行った。すると、円盤の半径によって塵の付着成長時間が異なるために、成長が進んだ内側と進んでいない外側の境界(成長前線)がリング構造として観測されることがわかった。時間が経つと外側でも大きなサイズの塵に成長できるため、成長前線は徐々に外側に広がっていく。

塵の付着成長シミュレーション
塵の付着成長シミュレーション。原始星円盤形成開始から6400年後(左)、1万3000年後(中)、2万6000年後(右)を表す。明るいオレンジ色の部分がリング構造で、内側(茶色の部分)では塵が大きなサイズに成長しており、外側(紫色の部分)では成長が進んでいない。時間経過とともにリングが外側に広がっていくことがわかる(提供:プレスリリースより、以下同)

次に、アルマ望遠鏡などの電波観測でリング構造が発見されている23個の円盤におけるリングの位置と、シミュレーションで求められた成長前線の位置を比較したところ、形成開始後100万年にも満たない非常に若い原始星円盤のリングの位置が成長前線と一致することがわかった。

中でも、おうし座の方向450光年彼方のL1527領域にある原始星IRAS 04368+2557では、原始星から15au(約23憶km)の場所に等間隔で並ぶ塊が発見されているが、この構造は成長前線によるリング構造を横から見ていると考えれば説明できることがシミュレーションとの比較で示された。この天体は原始星自体がまだ成長途中にあり、すでに周囲に原始星円盤が作られ始めていることが知られている。成長途中の円盤でこのような惑星形成が開始している様子が示されたのは初めてのことだ。

原始星円盤L1527の観測画像とシミュレーションによる原始星円盤の比較
アメリカのVLA電波望遠鏡による波長0.7cmの観測画像(左)と、シミュレーションによるリング構造を持つ原始星円盤のモデル画像(右)。星印は原始星の位置を示す。横から見た観測画像とモデル画像で、原始星の上下15auの同じ場所に明るい塊が見られる

今回の研究結果は、惑星形成の開始時期は従来考えられていたよりもずっと早く、原始星や円盤も形成途中にある段階で同時に惑星形成が始まっているかもしれないという形成メカニズムを示すものだ。恒星の形成後に惑星が作られるという従来の惑星形成論を大きく変える可能性があり、一般性を明らかにすることが今後の重要な課題となる。

惑星形成の従来モデルと今回の新モデル
惑星形成の従来考えられてきたシナリオ(左)と今回明らかにした新たな惑星形成シナリオ(右)。従来説では原始星や原始星円盤の成長が終わった後に円盤内で塵が付着し惑星形成を始めていくが、今回の説では原始星円盤がまだ成長している段階ですでに塵が大きく成長し、従来よりもずっと早く惑星形成が始まる