グリーンランドと木星のエウロパに共通する地形

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木星の衛星エウロパに数多く見られるものとよく似た二重の稜線が、グリーンランドの氷床で見つかった。いずれも液体の水が氷をこじ開けて形成したらしい。

【2022年5月6日 NASA JPL

木星の4大衛星の一つであるエウロパは、地球外生命体が存在するかもしれないと言われることがある。表面を覆う氷の下に、大量の液体の水をたたえた地下海があると考えられているからだ。ここで問題となるのは、物質が厚さ15~25kmの氷からなる地殻を行き来できるかどうかだ。地表にある栄養分が地下海へ到達するような環境があれば、間違いなく生命の存在に有利だと言える。

エウロパ
探査機「ガリレオ」が撮影したエウロパ(提供:NASA/JPL-Caltech/SETI Institute)

エウロパでは、いたるところで2本の稜線が数百kmにもわたって平行に伸びているのが見られる。この地形は1990年代にNASAの探査機「ガリレオ」が見つけていたが、その形成プロセスはまだよくわかっていない。

エウロパの二重稜線に関するヒントは、地球にあるかもしれない。

米・スタンフォード大学のRiley Culbergさんたちの研究チームは、グリーンランド北西部の氷床にエウロパとよく似た二重稜線が存在することに気づいた。この地形は、地球の極域の氷を航空機で上空から観測するミッション「アイスブリッジ(IceBridge)」が2015年から2017年にかけてレーダーで観測したデータから見つかったものだ。

二重稜線の比較
二重稜線の比較。(左)ガリレオが撮影したエウロパ、(右)2018年に地球観測衛星「ワールドビュー3号」が撮影したグリーンランド(提供:Culberg et al.、以下同)

観測データによれば、グリーンランドの二重稜線が作られたきっかけは、近くの地表にある湖の水が氷床の内部、氷の層の間に入り込んだことだという。溜まった水が再凍結すると、その上にある氷がひび割れて、ひびの両側が盛り上がり、稜線になったのだ。

エウロパの二重稜線も同じように作られているのだとすれば、地下海から表層付近まで水が持ち上げられていることになる。これはさらに、氷の地殻にも液体の水が多く含まれていて、地表と地下海との間で物質が行き来している可能性を示唆するものでもある。エウロパの稜線はグリーンランドのものと似ているが、より大きくて高い。これはエウロパの重力が地球よりも小さいことが原因かもしれない。

二重稜線の形成プロセス
二重稜線の形成プロセス。地表の氷床と地下の硬い氷の層の間に、隙間の多い氷の層がある。(a)水の流入。グリーンランドでは、表層の雪解け水が隙間へと流入する。エウロパでは地下海の水が上昇するなどによって水が入り込む可能性がある。(b)内部の圧力などによってひび割れが形成され、水がその中に充満する。(c)ひびを満たした水が凍り、氷の層を二分する壁となる。(d)水たまりの再凍結が続き、圧力が高まることで水が壁の両側を伝って逃げようとする。両側で表面の氷が持ち上げられるため、二重稜線が形成される。画像クリックで拡大表示

今回の成果により、エウロパの探査で生命に適した環境が見つかることへの期待がいっそう高まりそうだ。NASAが2032年に打ち上げを予定している探査ミッション「エウロパ・クリッパー」では、二重稜線の地下に液体の水を探すことも計画されるだろう。

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