火星探査機の最新成果:堆積岩から有機物、天体衝突による地震検出

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火星探査車「パーサビアランス」が、数十億年前の湖底で作られた堆積岩から有機化合物を検出した。また、火星探査機「インサイト」が小天体の衝突による地震波を記録していたことが発表された。

【2022年9月28日 NASA (1)(2)

火星の泥岩から大量の有機分子を発見

2021年2月に火星に着陸したNASAの探査車「パーサビアランス」は、かつて湖が存在したとされるジェゼロ・クレーター内で探査を続けている。35億年前に形成された三角州(川と湖の合流地点)で4つのサンプルを取得するなど、これまでに興味深い岩のサンプルを12個採取している。

三角州の中でも、「ワイルドキャット・リッジ」(Wildcat Ridge、山猫の山稜)という愛称がつけられた幅約1mの岩から7月20日に削り取られたサンプルはとくに興味深い。ワイルドキャット・リッジは何十億年も前に塩水湖の底で泥や細かい砂が沈殿してできた堆積岩とみられている。得られたサンプルには硫酸塩鉱物と有機化合物が含まれていた。どちらも、塩水湖にかつて生息していた生命の活動で形成された可能性もある物質だ。

ワイルドキャット・リッジ
ワイルドキャット・リッジの表面に露出している部分(提供:NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)

これまでの火星探査では、2014年に探査車「キュリオシティ」が岩石中に有機分子を検出しているほか、パーサビアランスは以前にもジェゼロ・クレーターで有機物を検出したことがある。だが今回の発見はこれまでと違い、かつて生命に適した環境だったと考えられる場所でなされたものだ。また、検出された有機物の量は、これまでのパーサビアランスのミッションでは最も多かった。

パーサビアランスによるジェゼロ・クレーター内にあるデルタ地形の探査を紹介する動画「Perseverance Explores the Jezero Crater Delta」(提供:NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)

火星上で小天体衝突による地震波を初検出

2018年11月に火星に着陸したNASAの探査機「インサイト」の地震計が、小天体衝突に伴う地震波を2020年から2021年に計4回記録していたことがわかった。衝突時の音も録音されているが、火星で天体衝突による振動が検出されたのは初めてのことだ。

2021年9月5日の録音では、大気圏突入、天体の分裂、そして衝突に伴う3つの音が聞こえる。小天体は少なくとも3つの破片に分かれたようで、その後NASAの探査機「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」が撮影した画像で3つの衝突痕が確認されている。

流星体衝突で形成されたクレーター
MROが撮影した、2021年9月5日の流星体衝突で形成されたクレーター。青は衝突で飛び散った塵や土の強調表示(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona、以下同)

他にも2020年5月27日、2021年2月18日、2021年8月31日にそれぞれ小天体が衝突したことがインサイトの記録から判明した。一方で研究者たちは、むしろ検出された衝突が予想より少ないことを疑問に思っている。火星は飛来物の豊富な供給源たる小惑星帯に隣接している。おまけに大気の厚さは地球の1%しかないため、突入した流星体の多くは燃え尽きることなく通過できるはずだ。

インサイトの地震計が検知した地質活動に伴う地震は1300回を超えている。その中にはマグニチュード5を超える地震(火震)もあった。それに対し、4度の天体衝突に伴う地震はマグニチュード2にも満たない。インサイトの研究チームでは、風の音などに遮られた衝突の振動が他にもあると考え、4年近い過去の観測データからさらなる天体衝突の信号が見つかると期待している。

流星体衝突の痕
2020年5月27日、2021年2月18日、2021年8月31日に、それぞれ流星体が衝突して形成された痕