海を持つ惑星は赤色矮星の周りに意外と多く存在する可能性

このエントリーをはてなブックマークに追加
原始惑星系円盤から水素を取り込む過程を考慮すれば、太陽より低温の赤色矮星の周りには海を持つ惑星が従来の予想よりも多く存在することがシミュレーションによって明らかにされた。

【2022年10月6日 国立天文台

太陽系外惑星の研究では、地球のように生命に適した環境を持つ惑星の存在可能性が大きなテーマの一つだ。とくに重要なのは水の存在で、生命活動に必要なのはもちろんのこと、安定した気候のためにも適度な量の海が必要だ。水が液体でいられるよう、惑星の軌道が恒星から適度な範囲(ハビタブルゾーン)にあることも大事だが、そもそも惑星が誕生した時点で水が存在しなければならない。

地球では形成時に、水を含む岩石や氷天体が飛来したことで海が作られたと考えられている。しかし、この考え方を太陽より質量が小さく温度が低い恒星である赤色矮星(M型矮星)周囲の系外惑星に適用すると、従来のシミュレーションでは適度な水量をもつ惑星が非常に稀であると予測されていた。赤色矮星は天の川銀河で一番多いタイプの恒星で、太陽系の近くにも多数存在することから系外惑星の重要な探査対象だが、これまでの研究に基づくと温暖な気候をもつ惑星が発見される可能性は極めて低いことになる。

これに対して、東京大学の木村真博さんと国立天文台科学研究部の生駒大洋さんは、別の方法で系外惑星に水がもたらされる可能性に注目した。

恒星が生まれると、その周囲にガスと塵が集まった原始惑星系円盤が形成され、円盤の中で惑星が誕生する。その惑星の周りには、原始惑星系円盤に含まれていた水素を主成分とする原始大気が形成される。一方、惑星が岩石惑星であれば、その地表は天体衝突などによる熱で溶けてマグマオーシャン(全面的に溶けた海のような状態)となっている。そこで、水素ガスとマグマに含まれる酸化物の化学反応からも水が生成される。このことを考慮すれば、従来の理論モデルよりも水に富んだ惑星を形成できる可能性がある。

原始の惑星大気とマグマオーシャンの反応で水が生成されるイメージ図
形成期の岩石惑星において、原始大気とマグマオーシャンとの反応で水(水蒸気)が生成されるイメージ図(提供:木村さん)

こうした効果を考慮したモデルを用いた数値シミュレーションの結果、大きさや大気量の異なる多様な惑星が生成されることが示された。その中から、ハビタブルゾーンに存在する惑星を取り出して獲得した海水量を調べたところ、赤色矮星の惑星は様々な水量を保持する可能性があり、地球と同程度の海水量をもつ惑星も形成されることがわかった。そのほとんどが大気中の水生成によって得られたものだ。解析によると、直径が地球の0.7~1.3倍の惑星のうち数%が、温暖な気候を維持するために適切な水量(地球海水量の0.1~100倍程度)を保持しているという予測が得られた。

海水量分率の頻度分布
M型矮星(0.3太陽質量)の周りのハビタブルゾーンに位置する、質量が地球程度(0.3~3倍)の惑星の、海水量分率の頻度分布。(緑)従来のモデルによる、含水岩石の獲得のみを考慮した計算、(橙)本研究のモデルを用い、原始大気中の水生成の効果を考慮した場合の結果。点線は現在の地球の海水量分率(提供:国立天文台リリース)

今後の系外惑星探査では、赤色矮星のハビタブルゾーンで地球程度のサイズを持つ惑星は100個程度見つかると予想されている。今回の結果によれば、このうち数個が地球のような温暖な気候をもつ海惑星であると予測される。

関連記事