超低温の赤色矮星で2例目、地球サイズの系外惑星を発見

このエントリーをはてなブックマークに追加
直径が木星ほどしかない超低温の赤色矮星で地球サイズの惑星が発見された。このタイプの星で惑星が見つかったのは「TRAPPIST-1」に続く2例目となる。

【2024年5月21日 リエージュ大学

赤色矮星は、中心で水素の核融合反応が起こっている「普通の恒星(主系列星)」のなかでは最も質量が軽く、温度が低い。そのなかでも特に温度が低いものを「超低温矮星(ultra-cool dwarf star)」と呼ぶことがある。超低温矮星はスペクトル型がM6.5よりも低温側の赤色矮星で、その表面温度は3000K未満しかない。直径は木星ほどで質量は太陽の約10分の1だ。一般に恒星は軽いものほど寿命が長いため、超低温矮星の寿命は現在の宇宙年齢を超える1兆年以上にもなる。

恒星は軽いものほど数が多く、超低温矮星は太陽くらいの質量を持つ星々よりずっとありふれているが、きわめて暗いのでその性質はよくわかっていない。天の川銀河に存在する惑星の大半は超低温矮星の周りを回っているはずだが、それらの惑星についてもほとんど理解が進んでいない。

ベルギー・リエージュ大学のMichaël Gillonさんを中心とする研究チームは、そんな超低温矮星の周りを公転する地球サイズの惑星「SPECULOOS-3 b」を発見した。Gillonさんたちは超低温矮星の惑星をトランジット法で検出する望遠鏡ネットワーク「SPECULOOS(Search for Planets EClipsing LUtra-cOOl Stars)」で、太陽近傍にある超低温矮星の惑星を探索している。超低温矮星で惑星が見つかったのは、有名な「TRAPPIST-1」に続く2例目だ。

SPECULOOS-3 b
超低温矮星「SPECULOOS-3」(右)の周りを回る惑星「SPECULOOS-3 b」(左)の想像図。主星は表面温度が2800Kの赤色矮星で、惑星はこの周りをわずか17時間で公転する(提供:NASA/JPL-Caltech)

SPECULOOSは2011年からプロトタイプの観測装置をチリのTRAPPIST南望遠鏡に取り付けて観測を始め、2017年に「TRAPPIST-1」の惑星系を発見した(参照:「40光年彼方に地球サイズの7惑星」)。これは超低温矮星を回る7個の惑星からなる系で、ハビタブルな惑星も複数存在すると考えられている。2019年からSPECULOOSとして正式観測を開始し、チリ・カナリア諸島・メキシコの計6基のリモート望遠鏡を連携して観測を行っている。

「超低温矮星は夜空に膨大な数が存在するので、惑星のトランジットを検出するために数週間にわたってそれらを一つずつ観測しなければなりません。そのためには専用のリモート望遠鏡ネットワークが必要です」(Gillonさん)。

SPECULOOS-3ははくちょう座の方向約55光年の距離にある、スペクトル型がM6.5の超低温矮星で、表面温度は2800Kと推定されている。質量は太陽の0.1倍、半径は太陽の0.12倍(木星の約1.2倍)だ。今回見つかった惑星SPECULOOS-3 bは、半径が約6100kmと地球とほぼ同じで、主星の周りをわずか約17時間で公転している。主星に非常に近い軌道を回っているため、地球が太陽から受ける放射の約16倍ものエネルギーを受けており、高エネルギー放射線も降りそそいでいると考えられる。

「このような環境では、惑星に大気が存在する可能性はきわめて低いでしょう。この惑星が大気を持たないことで、いくつか都合が良い点もあるかもしれません。たとえば、超低温矮星の性質を深く知ることができる、生命の存在に適した惑星があるかどうかについてもより深く理解できる、といった可能性が考えられます」(米・マサチューセッツ工科大学 Julien de Witさん)。

SPECULOOS-3 bはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の良い観測目標にもなるはずだ。研究チームは、JWSTを使えばこの惑星の表面について鉱物学的な知見も得られると考えている。

関連記事