超小型紫外線衛星「モーヴ」打ち上げ成功、恒星フレアをモニター観測

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11月29日、超小型紫外線衛星「モーヴ」が打ち上げられた。太陽のような星が起こすフレアを長期でモニタリングし、恒星活動と周囲の惑星への影響を明らかにすることを目指す。

【2025年12月5日 京都大学

11月29日3時44分(日本時間)、超小型紫外線衛星「モーヴ」を搭載した米・SpaceX社のファルコン9ロケットが、米・カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられた。モーヴは所定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。

「モーヴ」の打ち上げ
「モーヴ」の打ち上げ(提供:SpaceX

モーヴは、英・ブルー・スカイズ・スペース(Blue Skies Space)社が主導する国際共同プロジェクトで、日本からは京都大学白眉センターの行方宏介さんを中心としたチームが参画している。

モーヴの主な目的は、恒星活動とその周囲の惑星における居住可能性の関係を明らかにすることだ。直径13cmの望遠鏡を用いて、200~700nm(紫外線から可視光線の波長域)で、太陽のような恒星が起こすフレアの紫外線放射を3年という長期にわたりモニタリング観測する。

超小型紫外線衛星「モーヴ
打ち上げ前のモーヴ(大きさ20cm×20cm×40cm、重さ18.6kg)(提供:Blue Skies Space/C3S LLC

太陽のような恒星では、強力な爆発現象であるフレアが頻発に起こる。フレアは高エネルギーの紫外線やX線を放出し、周囲の惑星の大気や表面環境に影響を与えると考えられている。フレアに伴う紫外線放射のメカニズムの理解が進めば、若い太陽型恒星がどのように周囲の惑星大気を加熱・剥離させるのか、惑星が生命にとって安全な環境を維持できるのかといった疑問の解明に繋がる。

「モーヴは、これまでほとんど観測されなかった恒星の活動に関する知見をもたらします。恒星の振る舞いがその周囲の惑星に与える影響についての理解が深まることでしょう」(ブルー・スカイズ・スペース社 チーフサイエンティスト兼共同創設者 Giovanna Tinettiさん)。

モーヴの成果は、衛星による紫外線天文学(LAPYUTA計画など)の設計への将来的な貢献も見込まれるほか、超小型衛星による国際的な科学協力の成功例として、他の波長帯や科学分野への応用も期待される。

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