太陽系最古の隕石にみる木星の形成と移動の証拠

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太陽系最古の火成岩とされるアングライト隕石から、2つの異なる天体起源の酸素同位体が初めて発見され、太陽系形成に重要な役割を担った木星の形成と移動に関する情報が得られた。

【2023年5月23日 オープン大学国立極地研究所

英・オープン大学のBen Rider-Stokesさんたちの研究チームが、日本の南極観測隊(JARE29)が収集した隕石「Asuka 881371」と、日本とベルギーの合同南極観測隊(JARE54とBELARE-SAMBA2012-23)が収集した隕石「Asuka 12209」を分析した結果が発表された。どちらの隕石も、太陽系最古の火成岩とされるアングライトというタイプのものだ。

アングライト隕石Asuka 881371
アングライト隕石Asuka 881371。右は顕微鏡写真(提供:国立極地研究所 極域科学資源センター 南極隕石ラボラトリー

アングライト隕石Asuka 12209
東南極・ナンセン氷原の裸氷上のアングライト隕石Asuka 12209(提供:国立極地研究所)

どちらのアングライト隕石からも、異なる2つの天体の衝突が起源であることを示す酸素同位体が見つかった。1つの火山岩隕石試料から、異なる天体起源の酸素同位体が発見されたのは初めてのことだ。また、同位体比年代の測定から、隕石の形成時期が木星の形成や移動の推定年代と重なっていることが示された。隕石の起源となった衝突イベントが木星の移動によって引き起こされたことを示唆する結果である。

「木星の形成と移動に関する同位体的証拠を初めて示す成果です」(Rider-Stokesさん)。「私がとてもエキサイティングだと思うのは、1gにも満たない微量の物質を使って、太陽系の巨大で重要な出来事に関する重要な知見が得られるということです。JAXA等による世界初の火星衛星サンプルリターンミッション『MMX』などからもたらされるサンプルが微量でも、それがいかに重要かがわかるでしょう」。

衝突イベントは太陽系へ水を供給するという役割も果たしていたとみられており、研究チームではアングライト隕石の水素含有量の調査を進めている。