星座八十八夜 #18 翼を背負った農業の女神「おとめ座」

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〈おとめ座〉は〈うみへび座〉に次いで、星空の中で2番目に大きな面積を占めている星座です。そのわりには星座の形をたどるのが難しく、覚えにくい星座です。

【2023年8月29日 アストロアーツ

星座八十八夜

「スマホで楽しむ星空入門」より抜粋)

見どころ

〈おとめ座〉の目印は1等星のスピカで、これは「春の大曲線」「春の大三角」を使ってすぐに見つけだすことができます。しかし、ほかの星はせいぜい3等星で、星の並び方も複雑なので少々見つけにくいでしょう。それでも、となりの〈しし座〉の形がはっきりしているので、星図をたよりに〈しし座〉の後ろ足から東側に並ぶ星をたどれば、なんとか乙女の姿が浮かび上がります。

また、〈おとめ座〉から〈かみのけ座〉にかけては、銀河がたくさん集まっている「銀河団」が広がっていて、「おとめ座銀河団」「かみのけ座銀河団」と呼ばれています。棒渦巻銀河M58、楕円銀河M59・M60、M49、M61、楕円銀河M104(通称ソンブレロ銀河)などが有名です。望遠鏡を持っていたらぜひ探してみてください。

おとめ座

星座の起源

古代メソポタミアに起源を持つ古い星座です。太陽がこの星座にいるころに麦を撒くことから、バビロニアではこのあたりの星の群れを耕した畑の溝と呼んでいました。あるいは豊穣の女神イシュタルとしていました。やがておとめ座は麦の穂を持った女性として描かれるようになり、現在の星座絵にもスピカが麦の穂として描かれています。

ギリシアでは、農業の女神デーメーテール、その娘ペルセフォネ、あるいは正義の女神アストレアとされています。正義の女神アストレアに見立てる場合はとなりの〈てんびん座〉が人間の善悪をはかる「はかり」に見立てられます。〈おとめ座〉の星の群れはほとんど全ての時代を通じて、女神をかたどった星座となっていました。

日本では古くから伝わる名前はあまり残っていませんが、現代ではスピカの白い輝きを指して「真珠星(しんじゅぼし)」と呼ぶこともあります。また、暖かい春の空に輝く2つの星、スピカと〈うしかい座〉のアルクトゥールスを「春の夫婦星(めおとぼし)」と呼んだりもします。

黄道十二星座の一つで、8月23日~9月22日生まれの人の誕生星座です。

星座の物語

ギリシア神話では〈おとめ座〉は、農業の女神デーメーテールの星座として四季の発生にかかわる美しい物語が伝わっています。

それによると、デーメーテールは、花や草木の成長、穀物や果実の種撒きや収穫をつかさどっていました。ところがある日、娘ペルセフォネが冥土の神ハデスにさらわれ、冥界に連れていかれてしまったのです。悲しんだ母デーメーテールは、自分の仕事が手につかなくなり、神殿に引きこもってしまいます。そのために、地上では作物が実らなくなり、人々は食べ物が足りなくなって困ってしまったのです。

そこで神様たちが相談して、ペルセフォネを1年のうち4か月だけハデスのもとで生活させ、8か月は地上の母のもとへ帰らせることにしました。ペルセフォネが冥界にいる4か月間は、デーメーテールが悲しんでいるので地上の草木は枯れ果て冬となりますが、あとの8か月間は元気に仕事にはげむので、植物も生き生きと成長し、地上は春、夏、秋と季節がめぐってくるようになりました。このデーメーテールが、のちに星座になったのだと伝えられています。

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