ベピコロンボが水星に295kmまで最接近、最後のスイングバイを完了

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日本時間1月8日、日欧の探査機「ベピコロンボ」が水星に295kmまで最接近する6回目の水星スイングバイを実施し、来年11月の水星到着に向けた軌道の修正を完了した。

【2025年1月14日 ヨーロッパ宇宙機関

1月8日(日本時間、以下同)、日本とヨーロッパの共同ミッション「ベピコロンボ」が、ミッション全体としては9回目、水星では6回目となる最後のスイングバイを実施して、2026年11月の水星到着に向けた軌道の修正を完了した。

水星スイングバイのインフォグラフィック
「ベピコロンボ」の6回目水星スイングバイのインフォグラフィック。画像クリックで表示拡大(提供:ESA)

今回の水星スイングバイで、探査機は14時59分に水星に最接近して北極の上空295kmを通過した。その後、昼側へ通過しながら、北極にある直径約112kmのプロコフィエフ(Prokofiev)クレーター、直径約60kmのカンディンスキー(Kandinsky)クレーター、直径約50kmのトールキン(Tolkien)クレーター、直径約58kmのゴーディマー(Gordimer)クレーター内部の太陽光が全く当たらない「永久影」を「M-CAM1」カメラで真上から撮影した。

水星表面:プロコフィエフクレーターなど
探査機が787kmの距離から撮影した水星表面。プロコフィエフ、カンディンスキー、トールキン、ゴーディマーの各クレーターや、ボレアリス平原、アンリクレーター、リズマークレーターが見られる。画像クリックで表示拡大(提供:ESA/BepiColombo/MTM)

水星の永久影は摂氏マイナス170度以下と太陽系内で最も低温の領域の一つで、これまでに水の氷の存在を示す強力な証拠が得られている。ベピコロンボのミッションでは、昼側が摂氏400度以上にもなる高温の水星に、本当に水の氷があるのかどうかという謎の解明を目指す。

また、左下にはアンリ(Henri)クレーターやリズマー(Lismer)クレーターも見られる。内部がなめらかなのは、約37億年前に溶岩が流れ出て水星最大の平原であるボレアリス平原(Borealis Planitia)が形成された際に、その溶岩がクレーターに流れ込んだためだ。

2枚目の画像には、直径約290kmのメンデルスゾーン(Mendelssohn)クレーターやルスタベリ(Rustaveli)クレーターに加えて、直径1500km以上に及ぶ水星最大の衝突クレーター、カロリス盆地(Caloris Basin)も見られる。盆地から伸びる谷の中には明るい溶岩が存在していて、その性質や由来を調べることも探査目標の一つとなっている。

水星表面:カロリス盆地など
探査機が1427kmの距離から撮影した水星表面。メンデルスゾーンクレーター、ルスタベリクレーター、カロリス盆地が写っている。画像クリックで表示拡大(提供:ESA/epiColombo/MTM)

別のカメラ「M-CAM2」で撮影した画像では、上端近くに「ナヘル・ファキュラ(Nathair Facula)」と呼ばれる明るい領域が見られる。水星最大の火山活動の結果生じたものとみられていて、ここも探査の重要なターゲットの一つとなっている。

水星表面:ナヘル・ファキュラなど
M-CAM2が撮影した水星表面。ナヘル・ファキュラやフォンテインクレーターなどが写っている。画像クリックで表示拡大(提供:ESA/BepiColombo/MTM)

今回のスイングバイでも、探査機はこれまでと同様に水星周辺領域の観測を行っている。「ミッションの本格始動は約2年後ですが、6回の水星接近でも貴重な情報が得られました。研究チームはこれらのデータを使って、できるだけ多くの水星の謎を解明できるように力を尽くして取り組みます」(ベピコロンボプロジェクトサイエンティスト Geraint Jonesさん)。