【レポート】地球最接近目前のアトラス彗星をとらえた

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恒星間天体のアトラス彗星が12月19日に地球と最接近する。その前日に企画した、アストロアーツのスタッフによる観測レポート。

【2025年12月18日 アストロアーツ】

今年7月に発見された「アトラス彗星(3I/ATLAS)」は、太陽系外からやってきて太陽系外に去っていく恒星間天体だ。多くの天文現象や彗星は一期一会だが、このアトラス彗星のような恒星間天体はそのなかでもとりわけ「今回限り」という印象が強いものといえる。

※アトラス彗星という名称の天体は数多く存在するため、特定するために「3I(3例目の恒星間(Interstellar)天体)」という符号が用いられる。この記事内では以降は単に「アトラス彗星」と表記する。

アトラス彗星は10月末に太陽に最接近し、12月19日の15時ごろ(日本時間)に地球と最接近する。地球最接近とはいえ約2.7億km(太陽~地球の約1.8倍)離れているが、太陽最接近から地球最接近のころが最も明るく、見かけも大きくなるため、観察チャンスとなる。そこでアストロアーツのスタッフは18日未明にアトラス彗星の観測に出かけ、YouTubeでのライブ配信も行いながらアトラス彗星を撮影した。

アトラス彗星撮影ライブ(アーカイブ)

撮影にはアストロアーツの天体撮影ソフトウェア「ステラショット3」の新機能「メトカーフガイド」(近日アップデートで公開予定)を使用し、彗星を自動追尾しながら300秒露出で12枚撮影した。撮影画像は天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ10」でスタックや階調処理などを施して仕上げた。

アトラス彗星 12月18日撮影のアトラス彗星(撮影:アストロアーツ 上山治貴)。彗星を止めた表現のため、背景の恒星が線になる。画像クリックで表示拡大
撮影データ:2025年12月18日 3時54分~4時53分/露出300秒×12枚/ビクセン ED81S+ZWO ASI294MC(-10度冷却)/タカハシ EM-200 Temma2M/ステラショット3でメトカーフガイド、ステライメージ10で画像処理

観測中はアトラス彗星がみるみるうちに星々の間を移動していく様子が確認でき、彗星特有の淡い緑色の輝きをとらえることもできた。尾は極端に長いものではないが、存在感のある立派な彗星だと感じられる。ステラショットやステライメージにより、効率の良い撮影や簡単かつ美しい画像処理が可能な点も大きなポイントだ(詳細はブログ「アストロアーツの屋上チャンネル」で紹介予定)。

アトラス彗星はしし座の領域を西に移動中で、未明から明け方に見えている。明るさは11~12等級で、眼視は難しいものの、撮影は適切な機材があれば地球最接近後もしばらく楽しめる。次に人類がその姿を目にするのは、恒星間宇宙船が実現した未来になるかもしれない。現代に生きる私たちは、太陽系から去り行くアトラス彗星をできるだけ長く追いかけよう。

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