「IceCube」への貢献と高エネルギーニュートリノの発見にノーベル物理学賞

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2026年のノーベル物理学賞は、ニュートリノ観測施設「IceCube」への決定的な貢献と高エネルギーニュートリノ発見により、米・ウィスコンシン大学マディソン校教授のFrancis Halzenさんに贈られることが6日発表された。

【2026年10月8日 ノーベル財団/ウィスコンシン大学マディソン校/IceCube/千葉大学】

2026年のノーベル物理学賞が10月6日に発表され、南極点の氷を利用してニュートリノを観測する国際共同研究プロジェクト「IceCube(アイスキューブ)」への決定的な貢献と、天体物理学的起源を持つ高エネルギーニュートリノの発見により、米・ウィスコンシン大学マディソン校教授のFrancis Halzenさんに贈られることが決まった。

「独自の研究インフラを備えたウィスコンシン大学マディソン校以外の場所で、このプロジェクトが成し遂げられるとは想像できません。成功には運も味方しましたが、私はウィスコンシン大学マディソン校に在籍し、そこで型にはまらないアイディアが育まれ、エンジニアや同僚、管理職に至るまで、素晴らしいコミュニティの支援を受けてきました」(Halzenさん、コメント要約)。

Francis Halzenさん
Francis Halzenさん(提供:University of Wisconsin-Madison)

世界最大のニュートリノ検出装置であるIceCubeでは、氷床内部に5160個設置された検出器が、ニュートリノが氷中で反応した際に発生するチェレンコフ光を検出する。ニュートリノは電荷を持たず、物質ともほとんど相互作用しないため、遠方宇宙から地球までほぼ直進する。この性質を利用して、ニュートリノの飛来方向から、その起源となったブラックホールや銀河などの天体に関する情報を得ることができる。

IceCubeアレイのイラスト
(左)IceCubeの心臓部であるIceCubeアレイのイラスト。86本のケーブルに連なった検出器(DOM;Digital Optical Module)が、地表下1450mから2450mの深さにまで埋設されている。観測施設全体の高さは富士山の6合目と同じくらいで、総体積は約1km3 。(右)南極点の氷床中でニュートリノを待つDOM光検出器。画像クリックで表示拡大(提供:千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター(左)、(右))

Halzenさんは1988年に「ニュートリノが原子核と衝突した際に生じる光を南極点の氷の中に設置したセンサーでとらえる」という構想を初めて示した。南極点の氷床の中は様々なノイズの影響を受けにくく、地質学的に安定し、地震もない。この構想はすぐに他の研究者たちの賛同を得た。

「IceCubeは、世界中のどの望遠鏡とも違います。そして、Halzenのような科学者も他にはいません。氷の下、約1.5kmの深さにニュートリノ検出器を設置するというアイディアは、宇宙に対する私たちの考え方を根本から変えました」(ウィスコンシン大学マディソン校暫定学長 Eric M. Wilcotsさん、コメント要約)。

IceCubeの建設は2004年に始まり、部分的な観測を行いながら、2010年12月に建設が完了した。翌2011年から全検出器を用いた観測が始まり、2011年8月と2012年1月には、最初の高エネルギー宇宙ニュートリノとみられる2つの事象が検出された。また、2013年には、天体物理学的起源を持つ高エネルギーニュートリノの発見が発表された。

さらに、4年後の2017年9月にIceCubeが検出したニュートリノの飛来方向から、オリオン座の方向約40億光年彼方のブレーザーが有力な発生源として特定された(2018年発表)。これは、高エネルギーニュートリノの発生源を示す初めての証拠となった。

近年の成果としては、2022年にくじら座の方向約4700万光年離れた銀河「M77(NGC 1068)」から放出された高エネルギーニュートリノの有力な証拠が得られている。また、翌2023年には、天の川銀河からも高エネルギーニュートリノが放出されていることを示す証拠が得られている。これらの成果は、高エネルギーニュートリノを生み出す宇宙線加速源の解明につながる重要な手がかりとなっている。「Halzenさんの粘り強さと科学的な先見性が、新しいタイプの天文学への道を切り開きました」(ノーベル物理学委員会委員長 Mark Pearceさん)。

今年1月、IceCubeではアップグレードが完了した。これにより、ニュートリノの飛来方向などの再構成精度が向上すると期待されていて、ニュートリノ天文学のさらなる進展や、新たな宇宙現象の発見につながる可能性がある。

なお、IceCubeには日本から唯一、千葉大学ハドロン宇宙国際研究センターが参加し、主要な成果に貢献してきた(参照:「宇宙反ニュートリノの実証、グラショー共鳴を初検出」、「超高エネルギー宇宙線の正体は陽子ではなく原子核」、「宇宙ニュートリノ多重事象の可視光追観測で爆発的天体仮説に強い制限」)。

IceCube観測施設の中央に立つ制御室
IceCube観測施設の中央に立つ制御室(提供:Erik Beiser, IceCube/NSF)

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