天王星に未発見の衛星の存在を示唆
【2016年10月25日 NASA JPL】
米・アイダホ大学のRob Chanciaさんたちの研究チームはこれまで、NASAの土星探査機「カッシーニ」の観測データを使って土星の環の研究などを行っている。カッシーニのデータから環のふるまいに関する新たな考え方が出てきていることなどを背景に、Chanciaさんたちは天王星のデータも調べ直すことにした。
Chanciaさんたちが調べたのは、1986年にNASAの惑星探査機「ボイジャー2号」が取得した天王星の観測データだ。探査機が天王星の環の向こうから地球に向けて放った電波を観測する電波遮蔽のデータと、探査機から見て環の背景にある星が隠される星食のデータから、環にどれほどの物質が含まれているのかがわかる。
データ解析の結果、天王星の環にいくつかの模様が見つかり、複数の環のうち最も明るいものの一つであるα環の端にある物質の量が周期的に変化することや、隣のβ環の同じ部分にも同様の変化が生じていたことがわかった。
さらに、この模様が、土星の環に衛星が関わってできる「ウェイク構造」に似ていることがわかった。ウェイク構造とは、高密度な環の中にある小衛星の周囲に見られる細かな縞模様のことだ。計算によると、こうした模様を作る可能性がある、天王星の環に2個存在すると思われる未発見の小衛星の直径は4~14kmで、すでに天王星の周りに発見されている27個の衛星のどれよりも小さい。
「これらの模様を作る衛星は極めて小さく、簡単に見逃されてしまうでしょう。ボイジャーの画像は、こうした小衛星を写せるほど高感度ではなかったのです」(アイダホ大学 Matt Hedmanさん)。
もし本当に衛星が存在すれば、土星の環に比べて異常に細い天王星の環の特徴をうまく説明する手助けになるという。小衛星が2つ存在すると、環が散逸するのを防ぐ役割を果たす「羊飼い衛星」のようなふるまいを見せるだろう。たとえば、天王星の衛星のうち「オフィーリア」と「コーディリア」は、ε環の羊飼い衛星として働いている。
「環がなぜ細く保たれているのかは、1977年に天王星に環が発見されて以来、多くの研究者が長年にわたり取り組んできた課題です。私たちが提案している小衛星の存在が現実のものとなって、謎の解明にアプローチできるようになれば幸いです」(Chanciaさん)。
〈参照〉
- NASA JPL: Uranus May Have Two Undiscovered Moons
- 日本惑星協会 Space Topics: 天王星リングの揺らぎは未発見の二つの衛星による可能性
- The Astronomical Journal: Are there moonlets near Uranus' alpha and beta rings? 論文プレプリント
〈関連リンク〉
- 日本惑星協会(TPSJ): http://planetary.jp/
- アストロアーツ:
- 投稿画像ギャラリー: 天王星
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
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