4億6600万年前、地球には環があったかもしれない
【2024年9月20日 モナシュ大学】
古生代のオルドビス紀(約4億8540万年前~4億4380万年前)には、地球への隕石衝突が急増した時期があったらしいことが知られている。その証拠の一つは地上に残されている衝突クレーターの年代で、オルドビス紀中期に衝突したことを示すクレーターが多く見つかっている。もう一つの証拠は、当時の石灰岩の地層に「L型コンドライト」と呼ばれる隕石の微小な破片が多く含まれているという事実だ。この地層の分析から、隕石衝突が増えたのは約4億6600万年前と推定されていて、この事象は「オルドビス衝突急増期(Ordovician impact spike)」とも呼ばれる。
この時代に隕石衝突が急増した原因として、小惑星帯の中でL型コンドライトの母天体が分裂を起こし、その破片が太陽系の内側に降りそそいだために小天体の衝突が増えた、という説がこれまで考えられてきた。
小惑星が地球に衝突する場合、衝突地点は地球全体にランダムに分布するはずだ。実際、月や火星のクレーターの分布には偏りはみられない。
豪・モナシュ大学のAndrew Tomkinsさんたちの研究チームは、この仮説を検証するために、オルドビス紀中期の21個の衝突クレーターが衝突当時に地球上のどこにあったのかを、プレートの移動をさかのぼって再現した。
Tomkinsさんたちはオルドビス紀中期より古い岩石からなる安定陸塊に着目し、地理情報システム(GIS)のデータを使って、後の時代に堆積物や雪氷に覆われたり、侵食されたり、地殻変動を受けたりしていない領域の面積を計算した。さらに、プレート移動のモデルを使い、これらの地域がオルドビス紀中期にどこにあったかという「古緯度」を再現した。
その結果、これらの安定陸塊のうち、当時赤道付近にあったものは面積比で約30%しかなく、残り7割の安定陸塊は中・高緯度にあったことがわかった。にもかかわらず、21個のクレーターの古緯度は全て赤道から緯度で約30度以内の範囲に集中していた。
Tomkinsさんたちの計算では、衝突クレーターの位置が偶然このように赤道付近に集中する確率は、3つの面がある仮想的なコインを投げて特定の面が21回連続で出るのと同程度だという。
Tomkinsさんたちはこの結果から、これらのクレーターを作った隕石は小惑星帯から直接地球に降りそそいだのではなく、大型の小惑星が地球に接近して「ロッシュ限界」より内側に入り、潮汐力で破壊されてまず地球の周囲に「環」を形づくって、そこから落下したのだと考えている。
「数百万年にわたって、環から物質が徐々に地球に落下し、現在地質学的な記録となって残っているような隕石衝突の急増を引き起こしたのです」(Tomkinsさん)。
さらに、この環は地球の気候変動も引き起こした可能性があるとTomkinsさんたちは考えている。地球にこのような環ができたことで、地上に環の影ができ、太陽光をさえぎって寒冷化を招いたというのだ。実際、オルドビス紀終わりのヒルナンティアン期という時代には地球が急激に寒冷化し、過去5億年で最も寒冷な時期の一つだったと推定されている。
「地球の環が地球の気温に影響を与えたかもしれないという考え方は、地球外の出来事が地球の気候にどのような影響を与えたかという理解に新たな複雑さを加えるものになります」(Tomkinsさん)。
〈参照〉
- Monash University:Earth may have had a ring system 466 million years ago
- Earth and Planetary Science Letters:Evidence suggesting that earth had a ring in the Ordovician 論文
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