普通ではない風が吹くホットジュピター

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高温巨大ガス惑星「ホットジュピター」の一つ「CoRoT-2 b」では高温領域が予想外の場所にあることが赤外線観測で明らかにされた。この惑星では他のホットジュピターとは異なり、西向きの風が吹いているようだ。

【2018年1月29日 McGill University

ホットジュピターと呼ばれる高温の巨大ガス惑星は、私たちがよく知っている太陽系内の木星とは異なり、驚くほど中心星に近いところを公転している高温の惑星だ。公転周期は通常3日以下で、惑星は常に片方の面を中心星に向けており、反対側には永遠に光が当たらない。

当然、常に光と熱を受け続ける惑星の昼側は夜側に比べて温度が高くなり、惑星の最高温度の場所は中心星に最も近いところになることが多い。しかし理論と観測によれば、ホットジュピターでは赤道付近で東向き(惑星の自転と同じ方向)の強風が吹いていて、高温領域「ホットスポット」が東へ移動することもある。

カナダ・マギル大学宇宙研究所のLisa Dangさんたちの研究チームが、NASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」を使って系外惑星「CoRoT-2 b」を観測したところ、不思議なことにホットスポットが中央から西(自転の逆方向)にずれていることが明らかになった。「これまでに9つのホットジュピターを調べてきましたが、どの惑星でも理論の予測どおり、風は東向きに吹いていました。しかし、自然はわたしたちの意表をついてきました。CoRoT-2 bでは、風は予想とは違う向きに吹いています」(マギル大学 Nicolas Cowanさん)。

「CoRoT-2 b」の想像図
「CoRoT-2 b」の想像図(提供:NASA/JPL-Caltech/T. Pyle (IPAC))

CoRoT-2 bはわし座の方向930光年彼方にある木星の3倍ほどの質量を持つホットジュピターで、約42時間周期で中心星を公転している。近年多くのホットジュピターが発見されているなか、約10年前に発見されたCoRoT-2 bは、大きく膨らんだサイズと表面からの謎めいた放射スペクトルという2つの点で研究者の興味を引き続けている。「このホットジュピターの大気内で何か通常とは異なることが起こっていると考えられます」(Dangさん)。

今回の予想外の現象の原因として3つの可能性が考えられている。

1つ目は、惑星の自転が非常にゆっくりとしていて公転周期よりも長いならば、東向きではなく西向きの風が発生するだろうというものだ。しかし、CoRoT-2 bと中心星のような近接した系では惑星の自転と公転の周期は一致するはずなので、遅い自転はこの力学的な理論にそぐわなくなってしまう。

2つ目の可能性は、惑星の大気と磁場との相互作用で風向きが変わっているというものだ。もしそのような現象が起こっているならば、系外惑星の磁場を調べる貴重な機会が得られるかもしれない。

3つ目として、惑星の東側を覆う巨大な雲によって本来より暗く(低温に)見えている可能性も挙げられている。とはいえこれが事実なら、惑星における大気循環に関する現在のモデルに修正が必要になってしまう。

「謎の解明には、より良いデータが必要です。来年打ち上げ予定の『ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡』はスピッツァーの100倍の集光力を持っているので、これまでにない素晴らしいデータを提供してくれるはずです」(Dangさん)。