地球帰還中の「はやぶさ」、3つ目のイオンエンジンが無事点火

【2007年8月16日 ISAS トピックス

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ」を推進させる4つのイオンエンジンのうち、予備を除く3つすべてが使える状態となった。2010年の地球帰還を目指す「はやぶさ」と運用チームにとって、明るい材料が増えた。


「はやぶさ」は2005年11月に小惑星イトカワへの離着陸を成功させた直後、化学エンジンの燃料漏れなどにより危機的な状態に陥った。しかし運用チームの努力が実り、残された数少ない装置による姿勢制御を確立し、今年4月25日より本格的な地球帰還段階に入っていた。

重要な課題が、3つのイオンエンジンの稼働だった。イオンエンジンは、電気でイオンを加速した反動で「はやぶさ」を推進させる重要な装置。4つのエンジンのうちイトカワ離陸後に稼働しているのは「B」と「D」のみで、「C」および予備エンジンの「A」は安定性を欠くと判断され待機していた。しかし、作動時間9,600時間の「B」にも性能低下が見られ、4月20日からは「D」1台による推進が続いていた。その「D」エンジンも、作動時間が設計寿命の14,000時間に迫っていた。

運用チームは探査機の温度を見計らい、7月下旬に「C」エンジンの再起動を試みた。「C」エンジンは作動時間7,000時間と余力を残しているものの、稼働は2005年8月以来であり、制御と調整には時間を要した。28日、無事イオン加速に成功、「D」エンジンを停止し、「C」単独運転による航行が始まった。

運用チームは、11月まで「C」エンジンによる航行を継続し、その後は冬眠モードで弾道飛行させる計画であるとしている。