火星探査車スピリット、定点観測で火星の核に迫る
【2010年2月2日 NASA】
火星探査車スピリットは、10か月ほど前に砂地にはまり動けなくなってしまった。その後、救出作戦が試みられたが成功しなかったため、NASAは定点観測に切り替えて、周囲の土壌や大気、さらに火星の核に迫る探査などを進めるという。
NASAの火星探査車スピリットは、2004年に火星に到着して以来、前例のない6年という歳月にわたり探査を続けてきた。しかし、約10か月前に車輪を砂にとられ、移動する能力を失ってしまった。NASAは救出を試みてきたが、残念ながら失敗に終わった。そのため、スピリットは今後、現在の場所にとどまったまま探査を行うというが、まずは厳しい火星の冬を越すために、車体の角度を修正しなければならない。
現在火星の季節は秋半ばで、5月には冬がやってくる。そのため、今後太陽光による発電量は減り、2月中ごろにはじゅうぶんな電力が得られなくなる。探査車のプロジェクトチームでは、現在わずかに南に傾いてるスピリットを冬の太陽が見える北の空に向くように傾き修正する予定だ。
現在の角度では発電量が足りず、スピリットは冬の間おそらく地球との交信ができなくなる。数度でも傾きを修正するだけで、数日に一度の割合で交信が可能となる。また、重要な電子機器を冬の寒さから守るヒーターを入れておくこともできる。無事冬を乗り越えられれば、今いる場所で数か月から数年の単位で探査を続けることができると見込まれている。
米・コーネル大学の研究者で、火星探査車の主任研究員をつとめるSteve Squyres氏は「動けなくなったことが、即ミッションの終了を意味するわけではありません。定点観測の切り替えにつながったのです」と話している。
スピリットが動けなくなったことを逆手にとり、火星の核が液体なのか固体なのかを調べる観測が始まっている。具体的には、スピリットが発する電波を数か月かけて追跡し続けて火星表面の一地点の動きを数cm単位の正確さで調べ、自転に伴う火星のわずかなふらつきを検出する。また、これまでどおりロボットアームを使って周囲にある土壌を調べ、水が関係して形成された物質の存在などを調べる。そのほか、風による砂の粒子の移動や大気のモニターなども行う。
なお、もう1台の火星探査車オポチュニティーの方は、今月15日、18日、20日の3日間に170mを走破。約1000年前に形成されたと考えられている「Concepcion」と呼ばれる若いクレーター(直径10m)の手前100mに到達しており、今後同クレーターを撮影する予定だ。