ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた、まだら模様の冥王星
【2010年2月12日 HubbleSite】
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が、まだら模様をした冥王星の姿をとらえた。HSTの観測は、冥王星が単なる氷や岩の塊ではなく、季節変化に伴って大気がダイナミックに変動する活動的な世界であることを浮き彫りにした。
冥王星は、小さく、ひじょうに遠くにあるため、その素顔をとらえるのは容易ではない。それでもHSTは、季節の移り変わりに伴う表面の色や明るさの変化、白や暗いオレンジ、黒っぽい色などをとらえていて、そこからは冥王星が複雑な世界であることがうかがえる。
冥王星の表面にあるメタンは、遠く離れた太陽から届く紫外線によって分解され、暗く赤い色をした炭素の豊富な物質となって残っている。そのため、全体としてはこのような色をしていると考えられている。
冥王星の表面の色は、2000年から2002年にかけて変化し始めたようだ。北半球の極域が以前に比べ明るく、赤みが強くなっており、逆に南半球は暗くなっていることがわかった。これは、太陽光のあたっている半球で窒素の氷が昇華し、もう一方の半球で再凍結が起きているためだとみられており、表面の変化に影響を及ぼしている複雑なプロセスを明らかにする手がかりの1つと考えられている。
冥王星は、傾いた自転軸を持ち、(地球の)248年という長い周期で楕円を描きながら公転している。そのために季節変化も非対称に起こる。北半球の春は、すばやく夏へ移行する。冥王星が軌道上で太陽に近づくと、速度が速まるからである。また、地上から行われた観測によって、1998年から2002年の間に大気の質量が2倍になったことが示されたが、これは凍った窒素が蒸発して暖かくなったためではないかと考えられている。
今回公開されたHSTの画像は、冥王星をとらえたものとしてはこれまででもっとも詳しい。しかし、まもなく(6か月以内に)、さらに詳細な画像が撮影される予定だ。NASAの太陽系外縁天体探査機であるニューホライズンズが冥王星へ接近通過し、その際に南北どちらか一方の半球を撮影することになっている。
なお、HSTがとらえた冥王星表面に見られる明るい点は、一酸化炭素の霜が異常に多い領域であることがわかっており、ニューホライズンズの最優先観測ターゲットとなっている。