太陽研究の第一人者、常田佐久氏が林忠四郎賞を受賞

【2010年4月14日 国立天文台 アストロ・トピックス(545)】

自然科学研究機構国立天文台 ひので科学プロジェクト長の常田佐久教授が、日本天文学会「林忠四郎賞」を受賞した。日本の3つの太陽観測衛星「ひのとり」「ようこう」「ひので」のすべてに携わり、また、観測的な研究の面でも太陽物理学に多大な発展をもたらした氏の業績に対して贈られたものだ。


アストロ・トピックスより

(軟X線で見た太陽コロナの周期変動のグラフ)

1991年に打ち上げられた太陽観測衛星「ようこう」の軟X線望遠鏡(SXT)でとらえた太陽コロナの周期変動。クリックで拡大(提供:JAXA/NAOJ/LMSAL)

(授賞式のようすの写真)

3月26日広島大学で行われた天文学会総会での授賞式。クリックで拡大(提供:国立天文台)

(太陽観測衛星「ひので」の画像)

2006年9月に打ち上げられ現在も運用中の太陽観測衛星「ひので」。クリックで拡大(提供:国立天文台)

天文学における独創的で分野への貢献が顕著な研究業績に対して贈られる日本天文学会「林忠四郎賞」(注) を、自然科学研究機構国立天文台(台長:観山正見)ひので科学プロジェクト長の常田佐久(つねたさく)教授が受賞しました。

本賞の受賞対象となった業績は、「飛翔体観測装置による太陽の研究」です。

常田氏は、日本初の太陽観測衛星「ひのとり」計画に参画して硬X線望遠鏡の開発に携わって以降、2代目「ようこう」の軟X線望遠鏡の提案と開発、3代目の「ひので」の提案と可視光・磁場望遠鏡の開発および運用責任者として、これらの計画を成功させてきました。さらに、衛星開発のほか、観測ロケットおよび気球に搭載する装置の開発など、日本の飛翔体による太陽観測を推進しながら、同時に多くの人材を育成し、現在の太陽研究を支える礎を築いてきました。

観測的な研究における業績は、太陽物理学における最重要課題の一つであるコロナ加熱問題に突破口を開いたことです。常田氏は、先述の太陽観測衛星がもたらした太陽表面やコロナの詳細なデータをもとに、磁気リコネクション、磁気流体波動、局所的ダイナモ機構などの研究を行い、太陽における磁気流体の物理過程を明らかにしてきました。とくに、太陽全面に短寿命水平磁場があまねく存在することを明らかにするなど、その成果は世界的に高く評価されています。

現在、常田氏は、次の太陽観測衛星計画を提案し、検討を開始しているほか、海外の衛星ミッションにおいても共同開発者として参加しており、太陽物理学のさらなる発展への寄与が国内外から期待されています。

この授賞式と受賞記念講演会は、去る3月26日に開催された日本天文学会総会にて行われました。

注:京都大学名誉教授の林忠四郎(はやしちゅうしろう、故人)氏に京都賞が授与されたのを記念し、1996年に日本天文学会が創設した賞。