赤外線天文衛星「あかり」による世界最大の小惑星カタログを公開
【2011年10月14日 JAXA】
今年6月に科学観測を終了した赤外線天文衛星「あかり」による全天赤外線サーベイ観測の膨大なデータから、小惑星5120個を掲載した世界最大の小惑星カタログが作成された。完成した小惑星カタログは、JAXA宇宙科学研究所から全世界に公開され、誰でも自由に使うことができる。
2006年年2月22日に打ち上げられ、約130万天体に及ぶ「赤外線天体カタログ」が作成されるなど、赤外線天文学に関する多くの成果をあげた衛星「あかり」(ASTRO-F)。今年6月に電力異常によりその科学運用は終了したが、これまでの観測データを利用し、小惑星のカタログが作られた。
探査機「はやぶさ」のサンプルリターンにより大きな注目を浴びた小惑星だが、その実態はほとんどわかっていない。現在50万個以上の存在が知られているものの、非常に小さいために、大型望遠鏡をもってしてもほとんどの小惑星はその大きさなどの基本的な情報すらわかっていない。
通常、小惑星は受けた太陽光の一部を反射しているために可視光線で観測できるが、この方法では表面の反射率の違いによって明るさが変化してしまうため、明るさだけからその小惑星の大きさを推定することは困難であった。
しかし、太陽光によって小惑星が暖められることで発生する赤外線であれば、反射率の違いによる効果は存在しないため、赤外線の強度を用いればより正確に小惑星の大きさを求めることが可能である。「あかり」は小惑星探査に適した赤外線によって、全天を均一に見るサーベイ観測を行っていたため、数多くの天体の均質なデータを揃えるにはまさにうってつけの衛星であった。
「あかり」による「赤外線天体カタログ」を作成した際は、移動している天体を取り除く処理を施して天体カタログの作成を行っていたが、今回はその移動している天体から既にわかっている小惑星の位置情報を照らし合わせることで、小惑星からの赤外線放射を検出することに成功した。
このような処理により、小惑星5120個の大きさに関するカタログが完成した。現時点で世界最大のものであり、直径10kmを超える小惑星はほぼすべて網羅されている。得られた小惑星の大きさと、小惑星の軌道などの情報を組み合わせて詳しく調べることで、小惑星そのものの起源や太陽系の質量分布、さらには太陽系がどのようにして生まれたかについて重要な手がかりを得ることができると期待されている。
このカタログはJAXA宇宙科学研究所から全世界に公開され、誰でも自由に使うことができる。また、同じく全天の赤外線観測を行ったNASAの赤外線天文衛星「WISE」のデータについても、カタログ化・分析が進められている。
ちなみに昨日13日の発表は、小惑星の「族」(同一の小惑星から衝突破壊などで生まれた複数の小惑星)を発見した仙台市出身の天文学者、平山清次(ひらやまきよつぐ:1874〜1943年)の誕生日に合わせてのものということだ。