土星の衛星ディオネにも地下海が存在する可能性
【2013年5月30日 NASA】
氷で覆われた土星の衛星ディオネは一見変化に乏しいが、NASAの探査機「カッシーニ」の観測から、その地下に液体の海が存在しているらしいことや、かつて活動的だった可能性があることがわかってきた。
画像は、ディオネの北半球に800kmにわたって伸びるJaniculum Dorsa(注)と呼ばれる隆起地形だ。NASAの探査機「カッシーニ」の地形データから、その氷殻が大きく褶曲していることがわかり、過去にもっと高温であったことが示唆されている。
Noah Hammondさん(米ブラウン大学)によれば、この要因としてもっとも可能性が高いのが地下の海の存在だという。土星の潮汐力による伸縮で発生した熱は、衛星の核と外殻が離れている場合に大きく増幅される。
また、氷などを噴き出す土星の衛星エンケラドスのような割れ目の跡も見つかっていることから、ディオネにもかつて活動的な時期があったのかもしれないと考えられている。エンケラドスだけが現在も活発であり続ける理由については、エンケラドスの方が土星に近いので受ける潮汐力が大きい、岩石の割合が大きいので熱が多く発生する、などが考えられるものの、はっきりとはわかっていない。
エンケラドスのほか、同じく土星の衛星タイタンや木星のエウロパなどは地下に海が存在すると考えられており、地球外生命を探る対象として注目されている。今回のような観測結果を見ると、ディオネのような一見変化のない氷の衛星にも地下の海は当たり前に存在しているのかもしれない。
注:「Janiculum Dorsa」 Janiculumはイタリア・ローマ周辺の丘の名前。Dorsaは「畝」の意味。