画期的彗星探査に向け、探査機ロゼッタが冬眠から復帰
【2014年1月21日 ヨーロッパ宇宙機関】
今年夏にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到達し、史上初の着陸探査を目指す欧州の探査機「ロゼッタ」が、20日(日本時間)に冬眠モードから目覚めた。
2004年に打ち上げられた欧州の彗星探査機「ロゼッタ」が、2年半ぶりに冬眠モードから復帰した。2011年6月以来、機体の温度を保つヒーターなど必要最低限の機器以外をオフにしていたロゼッタは、1月20日午後7時ごろ(日本時間。以下同)にセルフタイマーで“起床”。方向を知るためのスタートラッカーの起動や姿勢の制御など一連の復帰動作を自動で実行した後、8億km以上離れた地球に向けてシグナルを送った。シグナルは21日の午前4時18分、米ゴールドストーンと豪キャンベラにあるNASA深宇宙ネットワークのアンテナで受信された。
今後しばらくは来るミッションに備えて機体と搭載装置のチェックなどを行い、5月に目標天体のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)を200万km彼方から初めて撮影する。1969年に発見された同彗星は6.5年周期で地球軌道のやや外側から木星軌道あたりを公転している。
ヨーロッパ宇宙機関の「ジオット」が史上初めてハレー彗星(1P/Halley)の核を間近にとらえてから28年。ロゼッタは、同機関にとって彗星探査における新たな「史上初」を刻むものだ。
8月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到着した探査機は、彗星とともに並走飛行(ランデブー)を開始する。そばを通過するだけのフライバイ観測でなく、彗星をランデブー探査するのは初めてのことだ。最初の2か月間で彗星表面を観測し、質量や形状、コマ(ガスと塵の大気)の分析を行う。プラズマ環境と太陽風との相互作用についても調べる。
これらの観測データをもとに着陸地点を決定し、11月には重量100kgの着陸機「フィラエ」が投下される。彗星への着陸探査もこれが史上初となる。幅4kmの彗星核は重力が小さいので、地表にねじを差し込んでフィラエを固定する。地表の高解像度撮影のほか、表面をドリルで削って氷を分析するなど幅広い科学観測が行われる。
ロゼッタとフィラエは、2015年8月に彗星が太陽に最接近するまで観測を続ける。太陽に近づいて活発になっていく彗星活動のようすを1年以上、現地で克明にとらえることができるのだ。知られざる彗星の姿に期待しよう。
探査機ロゼッタのミッション経過
2004年 3月 2日 | 南米ギアナ宇宙センターから打ち上げ |
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2008年 9月 5日 | 小惑星シュテインスのフライバイ観測 |
2010年 7月10日 | 小惑星ルテティアのフライバイ観測 |
2011年 6月 8日 | 冬眠モードに切り替え |
2014年 1月20日 | 冬眠モードの解除 |
2014年 5月 | チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の初観測 目標天体に向けて軌道修正 |
2014年 8月 | チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に到達、ランデブー飛行での探査開始 |
2014年11月11日 | 着陸機フィラエ投下 |
2015年 8月13日 | チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星とともに近日点通過 |
2015年12月31日 | ミッション終了予定 |
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