38億年間で7km縮小した水星

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【2014年3月19日 Carnegie Institution for ScienceUSGS

探査機「メッセンジャー」が観測した、水星の急斜面や低い山々など5900か所以上の地形を基にした研究から、過去38億年間に水星の半径が7km縮小していることが示された。


隆起と崖が540kmにわたって連なる水星の地形

画面上下方向に、隆起と崖が540kmにわたって連なる水星の地形。クリックで拡大(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington。以下同)

太陽系最小の惑星である水星は、半径2440kmで地球の4割弱の大きさしかない。この大きさについて、太陽系内の惑星に彗星や小惑星が激しく降り注ぐように衝突していた時期が38億年前に終了し、徐々に水星内部が冷えて小さくなっていったことが示唆されてきた。

水星の熱進化モデルでは、半径が約5〜10km縮小したと推測されていたが、1970年代半ばに探査機「マリナー10号」が観測した水星の地形画像から推算された縮小量は、0.8〜3kmほどだった。ただし、マリナーは水星全体の半分以下しか観測していない。

現在水星周回軌道で観測を行っているNASAの探査機「メッセンジャー」の研究員Paul Byrneさんらは、同探査機の全球データからさらに多種多様な地形構造を調査した。数多くのプレートが存在する地球とは異なり、単一の岩石質の層を持つ水星について、尾根や崖のような急斜面など、全球的な縮小に起因する大小さまざまな地形構造を6000か所近くも確認した。これらの地形から導き出された水星の縮小量は半径7kmであり、熱進化モデルの範囲と一致することがわかった。

「この成果によって、水星における熱進化モデルと観測結果を長年隔てていた食い違いが解決しました」(Byrneさん)。

今回の発見は、水星について、熱の発生とその喪失だけでなく、地殻構造および火山活動の歴史を紐解く鍵となるものであり、異常に大きな金属質の核の構造にも迫るものとなった。


歌川国芳の名が水星のクレーターに

国芳クレーターとその周辺

国芳クレーターとその周辺。クリックで拡大

水星の南半球にあるクレーターが、江戸末期の浮世絵師、歌川国芳(1798〜1861)にちなんで「国芳クレーター」(Kuniyoshi)と命名された。このクレーターは直径26.5kmで、南緯58度に位置している。

水星の地名は、世界各国の文芸・芸術関連の人物から付けられる慣例があり、日本からはこの他にも紫式部、世阿弥、黒沢琴古ら歴史的な作家・芸術家が名を連ねている。

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