fシリーズ鏡筒セットを試用
ポルタは、経緯台単品だけでなく、鏡筒とのセット品も5機種がラインアップされている。最近のビクセン製鏡筒には、従来からの製品に加え、fシリーズと呼ばれる安価なグレードの製品群が存在しているが、今回はこのfシリーズの鏡筒をセットにしたポルタA80MfとポルタR130Sfの2機種を試用してみた。
ポルタA80Mfは、口径80mm、焦点距離910mm、F11.4の2枚玉アクロマート屈折である。また、ポルタR130Sfは口径130mm、焦点距離650mm、F5というニュートン反射である。
うれしいのは、やはり価格だ。ポルタA80Mfは定価49,350円、ポルタR130Sfは定価54,600円で、実販価格はさらに安価になる。いずれも鏡筒の一部にプラスチック製のパーツが利用され、高級感に乏しい点は否めない。それでも、それぞれ6×30mmのファインダー、PL20mmとPL6mmの2本のアイピース、さらにポルタA80Mfには天頂プリズムが標準装備され、とりあえず天体を眺めてみたいという天体観望入門者には過不足ないだろう。ファインダーの調整も三方の押し引きネジ方式ではなく、スプリングを利用した直交2方向のXY方式なので、調整も容易である。
■ポルタ A80Mf
ポルタA80Mfの対物レンズは、オーソドックスな分離式の2枚玉アクロマートで、コーティングも施されている。レンズセルは、プラスチック製で光軸修正機構はない。レンズの押さえ環もプラスチック製で、ねじ込まれているだけ。輸送中に振動を与えると押さえ環がゆるんでしまわないか、やや不安である。フードはアルミ製だ。
接眼基部はアルミダイキャスト製。ラック&ピニオン式のドローチューブの繰り出し量は14cmほど。天頂プリズムなしの直視観望では、付属の延長筒を併用する。鏡筒には迷光防止の絞り環が3枚、さらにドローチューブ内にも2枚が装着されている。6倍30mmのファインダーは脚とともに脱着式である。接眼基部にアリミゾ台座があり、脱着は簡単だ。
ポルタA80Mfでは、水平軸の微動ハンドルを鏡筒と平行にすると天頂付近を眺めるときに干渉するので、接眼部から向かって右外側45度の位置に設定した。また垂直軸の微動ハンドルは、鏡筒と平行にしている。三脚は大人が使用するなら、もっとも伸ばした状態でよいだろう。天頂プリズムを付け、微動ハンドルをつかんだままのぞくと、望遠鏡に覆いかぶさるようになるが苦しい姿勢ではない。
実際に天体を観望したが、コントラストも高く、焦点距離が長いので、アクロマートでも輝星の色にじみは意外と気にならない。淡い星雲星団の観望は80mmの口径なりだが、月面や惑星はじゅうぶんに楽しめる。
ちなみにフリクション調整は、両軸ともに微動部分のユニットの横に空いているネジ穴内部にあるイモネジで行う。水平軸の上の黒いゴムカバーの中にある小さいほうのレンチを使おう。
■ポルタR130Sf
鏡筒は鉄板のロール品だ。接眼基部はプラスチック製で、なんとドローチューブもラックギア一体成型のプラスチック製。筒外焦点はひじょうに長く、付属のアイピースでは、付属の延長筒併用でピントが合う。斜鏡スパイダーは4本で、いわゆるVANE式だが、斜鏡はセルに接着されている。ファインダーは、屈折のポルタA80Mfと同じ6倍30mmが付属する。
ポルタR130Sfの主鏡は、一般的な3本ツメの主鏡セルに収められている。主鏡セルはエンドリングの内側に3組の光軸修正ネジで固定されていて、エンドリングを鏡筒から外さないと主鏡を取り出せない構造だ。セルは主鏡の裏側の周囲だけを支えているタイプで、中央部は主鏡の裏面が露出している。そのため、エンドリングは円形の化粧板でふたをされている。
ポルタR130Sfでは、水平軸の微動ハンドルを接眼部から向かって左外側45度の位置になるように設定した。また垂直軸は、微動ハンドルが鏡筒後方45度上側になるようにアリミゾ台座を固定してみた。三脚の長さをほどよく調節すれば、楽にハンドルに手が届き使用感はかなり良好だ。R130Sfの接眼部をやや斜め上側になるように鏡筒を回転させると、天体の高度が低くてものぞきやすく、さらに使い勝手が向上する。
ポルタA80Mfと比較観望すると、コントラストは落ちるが、口径が大きな分、明るい星雲星団などの観望では有利となる。比較的低倍率で、夏の銀河の中にある天体を巡るといった用途に使ってみたい。
2機種とも、鏡筒と経緯台の大きさのバランスがほどよく、ベストマッチングである。アリミゾを利用して、手持ちのスポッティングスコープなどを取り付けてみるのもよいだろう。