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星ナビ機材セレクション

「ビクセン AX103S」

アストロアーツオンラインショップ特価
298,000円(税込)

星ナビ 2009年11月号

レポート/川村 晶+星ナビ編集部

2010年2月15日

広いレンズ間隔が特徴的

ビクセンはバイザック光学系やVMC光学系など口径の大きな反射系や、屈折系のネオアクロマートなど野心的な光学系を世に送り出しているが、AX103Sもかなり特徴的な光学系である。

対物レンズは、中央にEDガラスの凸レンズ、前後にフリントガラスの凹レンズという配置の設計である。3枚玉アポクロマートとしてはよくあるスタイルだが、AX103Sでは3枚のレンズがそれぞれ20mmほど離されている。これほどレンズ間隔の広い設計は、あまり例がないだろう。レンズの枚数を増やし、さらにレンズどうしの間隔を開ければ、設計の自由度が増していく。その反面、レンズやセルの製作に高い精度が要求され、調整の難易度も増すといわれている。したがって、設計者は机上での光学設計のみならず、加工精度や調整の難易度など製造現場の技術や、製造コストに見合う範囲で生産可能なようにトータルな設計センスが問われる。いかにすばらしい性能の光学性能のレンズが設計できても生産不可能だったり市場に受け入れられない価格だと意味がないからだ。

各レンズの間隔が広いこともあって、対物レンズセルは異様に大きい。全長210mmほどの伸縮式フードの中のおおよそ半分のスペースがセルとレンズである。

対物レンズセルは、2つのパーツに大別できる。鏡筒の筒部に直接組み付けられている接眼部側のセルには、中央の凸レンズと後面の凹レンズがセルの前後から落とし込まれ固定されている。前面の凹レンズは別のセルに収められて後部のセルに6組の押し引きネジで組み付けられ、レンズ間隔・光軸の傾き・光軸のセンター出しの調整が可能になっている。後部のセルと2枚のレンズは加工精度のみで組み付けられている。

ビクセンによれば、試作当初、どのレンズがどう動くと星像の善し悪しにどう影響を与えるのかなど、コンピュータでシミュレーションをくり返し、レンズセルを何度も作り直したという。

4枚目のレンズであるフィールドコレクターレンズは、ドローチューブ内部に収められている。したがって、合焦のためにアイピースや撮像素子とともに動く構造だ。

レンズセルとフード

フードをはずしてレンズセルが見える状態にしてみた。セルの長さが一般的な屈折望遠鏡よりもはるかに大きいことがわかる。フードは伸縮式で、長さは210mmほどあるが、内部のセルが大きいのでスライド量は100mmほどしかない。

ラックピニオン

ラックピニオンはオーソドックスなタイプ。別売の減速比約7:1のデュアルスピードフォーカサー(29,400円)も取り付け可能。

ファインダー

ファインダーは、口径50mm、倍率7倍。ゴム見口と明視野照明装置が付く。アリミゾ式のファインダー脚は、XYの光軸調整微動を採用。

ドローチューブ内レンズ

ドローチューブの内径は59mm。端面から約50mmほどのところにフィールドコレクターレンズが装着されている。

撮影用オプションパーツ

撮影にはいくつかのオプションパーツが必要だ。直焦点撮影には、VC用延長チューブ(3,465円)と直焦ワイドアダプター60(各社用5,250円)、Tリング(各社用2,310〜3,150円)を併用。また、焦点距離を0.7倍にするAX103Sレデューサーも直焦ワイドアダプター60とTリングを併用して、一眼レフカメラを取り付けられる。

バンドアリミゾ

鏡筒バンドは、巻き付けて締め付けるようなビクセン独自の機構を採用。さらに鏡筒バンドはアリミゾプレートを介してSX赤道儀やGP2赤道儀、ポルタ経緯台などに搭載可能。鏡筒バンドには、キャリングハンドルも標準で装備。鏡筒前後の重量バランスの見極めも、ハンドル中央を持って持ち上げるだけでよくわかる。

レンズセル分解

レンズセルは2ピース構造。大きな筒状の後部セルには、中央と後面のレンズが前後からはめ込まれ、ねじ込み式の押さえリングで固定される。ここには光軸調整の機構はなく、工作精度のみの組付けだ。レンズのコバ面とセルの隙間もほとんどなく、レンズをはめ込むときの空気抜きの穴が側面に開けられている。薄い方の前部セルは前面の凹レンズをはめ込み、押さえリングで固定してから光軸の傾きとレンズ中心の位置を調整しながら組み付ける。