日食を見るには、特別な観察器具が必要です
太陽の光は非常に強いため、その大部分が隠れていてもまぶしすぎて欠けている様子がわかりません。金環食の間を含め、日食を直接(投影など以外の方法で)見るには太陽観察用のプレートやメガネなど特別なフィルターが必須です。「太陽のまぶしさを抑え」かつ「有害な光線をふせぐ」役割があります。サングラス等での観察は危険!
太陽観察用以外の、一般的なサングラスや黒い下じき、色つきガラスなどは有害な光線が通り抜けてしまうおそれがあるため、確認せずに観察に使うのは非常に危険です。目を傷め、視覚障害を引き起こすことがあります。「どうすれば見られるの?」ページでは、安全に日食を見るための注意事項や、いろいろな観察方法・器具をご紹介しています。
太陽観察用器具はアストロアーツオンラインショップでもお取り扱いしております。
「金環日食」って?
金環日食を見よう!
日食とは、太陽−月−地球がほぼ一直線上に並んだとき、地球から見て月が太陽の前を通り、その一部または全部を隠してしまう現象です。いくつか種類がありますが、太陽と、見かけがそれより少し小さい月がぴったりと重なって、太陽がリング状に見えるものを「金環日食」といいます。
太陽はほんの一部が現れるだけでも非常にまぶしいため、金環食ではそれほど空が暗くなりません。日食観察用の道具を通して見ると、左の写真のように欠けて見えます。
2012年5月21日の朝、日本の人口の7割が居ながらにしてこの金環日食を目撃する絶好の機会が訪れます。また、金環食が見られない地域でも、大きく欠ける太陽を見ることができます。“宇宙”を体感できる貴重な天体ショー、絶対に見逃せません。
日本では25年ぶり
日付 | 種類 | 見られる場所 |
---|---|---|
2030年6月1日 | 金環 | 北海道 |
2035年9月2日 | 皆既 | 北関東〜北陸 |
2041年10月25日 | 金環 | 東海〜近畿 |
2042年4月20日 | 皆既 | 太平洋沖 |
世界中で見ると、金環日食は1年に1度あるかないかという頻度で起こります。これは皆既日食と同じくらいです。最近では2009年1月(インド洋〜インドネシア)や2010年1月(アフリカ〜インド洋〜中国)で見られました。
日本では1987年9月23日の沖縄日食以来25年ぶりの金環日食です。2012年の次は、2030年6月1日の北海道となります。また今回のように、ほんの一部だけではなく日本列島を縦断する多くの地域で見られるのは、1000年近く前の平安時代(1080年)以来とも言われる、非常に珍しいチャンスです。
日食の何が面白いの?
「日本で見られるのは25年ぶり」「めったに見られない」とはよく言われますが、珍しければいいというわけではありません。夕方の西の空のグラデーションも、地球が自転しているからこそ見られる「天文現象」。毎日見られるからといってその美しさに変わりはありません。
では、日食の何かすごいのでしょうか?
太陽と月の見た目サイズを実感できる!
5月21日の日食当日の太陽・月の見た目の大きさと距離を、実感できるレベルまで縮小してたとえてみましょう。「1.5km先にある直径14mの太陽の手前を、4m先にある直径3.5cmの月が通過するのを、直径13cmの地球の上から見る」という具合になります。今回は月が太陽よりも見た目の上でわずかに小さいために金環日食となりますが、月がもっと地球に近い時には、太陽がすべて隠れる「皆既日食」が見られます(詳しくは下の「金環日食のしくみ」へ)。
太陽と月の見かけの大きさ、そして地球〜月の距離のわずかな変動といったバランスの妙が、日食という興味深い現象を生み出します。
太陽のパワーを実感できる!
日食は多くの人が太陽に注目する機会です。日食観察プレートや日食めがねなどの太陽観察用フィルターで太陽を見ると、意外に小さいことに驚くかもしれません。これほど遠く小さく見えるものが、まるですぐそばにあるかのように光と熱をもたらしていると考えると、太陽のすさまじいパワーを感じることができます。さらに、金環食の時に大きく欠けて細い環になった太陽をフィルターごしに見てから、ゆっくりと視線を外して周囲の明るさを確かめてみると、より一層太陽の強力さを実感することができるかもしれません。
月が動いているところを直接見られる!
月は約27日周期で地球の周りを公転しています。星座などを背景に月が移動しているのは1日ごとに見てとれますが、じっと見つめていても月が動いていることはなかなかわかりませんよね。日食の時は見かけの小さい太陽がすぐそばにあるため、月がじりじりと動くようすを直接見ることができます。日食の経過は地球の自転によるものと考えがちですが、実は月の公転によるものなのです。
以上はほんの一例です。それぞれ面白いと思うかどうかは見る人次第。まずは日食のことを知って、自分の眼で確かめて、自分だけの“日食のツボ”を発見してみよう。
金環日食のしくみ 皆既日食との違いは?
金環日食
地球の周りを回る月の軌道はすこしつぶれた楕円形なので、地球〜月の距離は一定ではありません。したがって月の見かけの大きさはその時々によって違ってきます。
金環日食は、皆既日食の時とくらべて月が遠くにあり、地球からの見かけが小さいときに見られるものです。太陽がすべて隠されず、一番外側がリングのように光って見えます。皆既日食の時は一瞬にして辺りが夜のように暗くなりますが、金環日食の場合は、太陽の見える面積は小さくても非常に明るいので、それほど暗くなりません。非常に強い光線を放っているため、直接観測するには日食観察プレートや日食メガネなど、特別なツールが必須です。(参考:どうすれば見られるの? >)
【右】1999年2月16日の金環日食(オーストラリアにて川村晶撮影)
皆既日食
2009年7月22日の「中国・トカラ皆既日食」は、日本国内で46年ぶりに見られるとして大きな話題になったのを覚えている人も多いはず。「皆既日食」と「金環日食」は、太陽と月の中心がほぼ重なる点では同じですが、皆既日食は太陽がすべて隠されるため、空が夜のように暗くなり、肉眼でも太陽の外気層である「コロナ」が輝いて見えます。あらゆる天体ショーのなかでも、とりわけドラマチックなものとされています。
中でも、皆既の始まりと終わりに瞬間的に見える「ダイヤモンドリング」はハイライトです。
【右】2009年7月22日の皆既日食(インド・バラナシにて川口雅也撮影)
部分日食
月が太陽の一部を隠して、まるでかじったパンのように見えるのが「部分日食」。見られる頻度が比較的高く、最近では2011年6月2日に、北海道や東北でほんの少し欠ける太陽が見られました。
2012年5月21日の日食では、金環食が見られない地域でも、太陽が大きく欠ける部分日食を日本全国で見ることができます。「金環食にともなう部分食」です。同様に、皆既食が起こるときも、その周辺地域では部分食が見られます。
一方、皆既食や金環食が起こる地域は皆無でも部分食だけが見られるという時もあります。
【右】部分日食の連続写真(藤井旭撮影)
どこで見られるの?
世界では…
少なくとも部分食が見られる、という地域はとても広く、南アジア・ロシアから北アメリカにかけての北半球の大部分です。
その中でも金環食が見られるのは、中国南部から日本を通って北米にいたる幅300km前後のベルト状の一帯で、約4時間かけて月の影が横断していきます。
まず金環食が見られるのは、中国の南側から。ここでは日本時間午前7時ごろ、金環食の状態で太陽が昇ってきます。そのあと香港、台湾を経て、日本から太平洋側へ抜け、アリューシャン列島の南側で金環帯の真ん中となります。その後はアメリカ西海岸からネバダ州、アリゾナ州などを通って、テキサス州で終わります。日本時間では10時半ごろですが、ここでは日没時間。リング状の夕日が沈んでいくのを見ることができます。
日本では…
日食観察プレートや日食メガネなどの観察道具があれば、日本全国どこでも午前6時ごろから9時ごろにかけて、太陽が9割以上欠け、もとに戻っていくところを見ることができます。
ラッキーな地方では、午前7時半前後の数分間、リング状になった太陽が見られます。金環日食が見られるのは、九州南部、四国、近畿地方南部、中部地方南部、東海地方、関東地方です。地方によって日食の経過時刻や欠け具合が異なるので、自分の住む町の情報をあらかじめ調べておきましょう。
いつ、どこで見られるの?ページでは、都道府県庁所在地での経過時刻と食分(欠けぐあい)を一覧で見ることができます。
5.21何が起こる?シミュレーション
日の出
5月21日、待ちに待った夜明けがやってきます。この日、世界中の人がいつも以上に注目する太陽が東の空に登場します。当日、東京での日の出は4時30分、札幌で4時5分、那覇は5時39分です。
太陽の光で見えなくても、この時すでに月は太陽のすぐそばにあり、一緒に昇ってきています。
自宅以外の場所で日食を見るときは、観察ツールを忘れず出かけ、安全な場所で観察しましょう。
食の始まり(第1接触)
太陽と月が近づき、いよいよ食の始まりです。食の開始時刻は、那覇で6時6分、東京で6時19分、札幌では6時33分です。これを「第1接触」といいます。瞬間的に「今欠け始めた!」というよりは、「なんとなく右上のあたりが凹んでいるな」と思って眺めているうちにじりじりと欠けていく、そんな印象です。
太陽の光はとてもまぶしいので、欠けているようすを直接肉眼で見ることはできません。あらかじめ準備した太陽観察ツールで見てみましょう。数分間見ているだけでも、徐々に欠けていくのがわかります。
金環食の始まり〜終わり(第2接触〜第3接触)
徐々に重なった月の輪郭が太陽と内接し、ふちがつながってリング状になります(第2接触)。金環食の始まりです。日本で金環帯の中にある地域では、7時半前後の出来事です。東京では7時32分から金環食が始まります。
太陽の大部分が月に隠されたとはいえ、リング状の部分だけでも太陽は非常に明るいため、意外に暗くなりません。皆既食の場合は、皆既になった瞬間から肉眼で見たり、撮影用フィルターを外したりすることができますが、金環食の場合は普段の太陽と同じように、太陽観察ツールを使用して観察を続けます。
皆既日食では、皆既食と始まりと終わりに見られる「ダイヤモンドリング」が有名ですが、金環食の始まりと終わりでは、左の写真のような「ベイリービーズ(Bailey's Beads:ベイリーの数珠)」という美しい現象が見られます。これは月の地形の凹凸によるものです。太陽は意外に輪郭が小さいため、望遠レンズなどで拡大しないと見えにくいかもしれません。
「ベイリービーズ」は、金環帯の境界付近でより長く見やすくなります。これは、月の輪郭が太陽の円周からあまり離れずじりじりと動いて見えるためです。
金環食は長いところでは数分間にわたって継続します。劇的な変化はないものの、あたりの明るさや温度など、周囲のようすに変化があるかどうかを見てみるのもよいでしょう。
金環食の間も、太陽と月はお互いに動いて見えています。月が金環食開始時とは反対に内接した時に、金環食の終了となります。
食の終わり(第4接触)
金環食終了後、1時間20分ほどかけて太陽はゆっくりと元の姿に戻って行きます。だんだん日が高くなってきます。
写真で見る日食ヒストリー
報道・広報用の資料素材は金環日食資料ダウンロードページへ。日食の画像や解説図、動画などがあります。- 2011年6月2日 北日本 [部分日食]
- 2011年1月4日 ヨーロッパ・アフリカ北部・西アジア [部分日食]
- 2010年7月11日 南太平洋 [皆既日食]
- 2010年1月15日 アフリカ・東南アジア [金環日食] 日本 [部分日食]
- 2009年7月22日 中国・トカラ [皆既日食]
- 2008年8月1日 グリーンランド・ロシア・中国 [皆既日食]
- 2007年3月19日 アジア・アラスカ [部分日食]
- 2006年3月29日 アフリカ・中央アジア [皆既日食]
- 2005年10月3日 スペイン・アフリカ [金環日食]
- 2005年4月9日 南太平洋・中南米 [金環皆既日食]
- 2004年10月14日 北東太平洋・ロシア東北部・日本 [部分日食]
- 2003年11月24日 南極 [皆既日食]
- 2002年12月4日 アフリカ南部・オーストラリア [皆既日食]
- 2002年6月11日 太平洋 [金環日食]
- 1999年8月11日 ヨーロッパ・西アジア [皆既日食]
- 1998年2月26日 カリブ海 [皆既日食]
よくある質問と回答
Q:金環日食のときは真っ暗になるの?
A:いいえ。金環日食では月のみかけの大きさが太陽より小さいため、一番外側は覆い隠されずに残ります。この一部分だけでも太陽の光は強烈なので、条件が良いとき(空に雲が少なく晴れわたっている)に気をつけて見ない限り、気づくほどの変化はありません。
一方、皆既日食の時は太陽がすべて隠されるので、辺りが暗くなります。
Q:日食を見るのに日食めがねは必須?
Q:日食を見るのに日食めがねが絶対必要というのは本当? 日食めがねを売るための口実ではないのですか。
A:ピンホールの原理を使って太陽光を投影する方法なら、道具を購入することなく日食が欠けている様子を見ることができます。太陽光を小さな穴に通す、あるいは鏡で反射させて紙や壁に投影させると、欠けた太陽の形がわかります。詳しくは「観察方法ページ」をご覧ください。
太陽の方に向いて直接見る場合は、日食めがねや日食観察プレートなどのフィルターは必須です。
Q:「食分」ってなんのこと?
Q:「食分0.95」などといった数字をよく見ますが、「食分」とは何ですか。欠ける割合のことでしょうか。
A:その通り。太陽がどのくらい月に隠されているかを表す数字です。ただし、よく誤解されますが、「面積」ではなく、太陽や月の見かけの半径などが基準です。
Q:なぜ日食の経過は東に向かって移動するの?
Q:「いつ、どこで見られるの?」ページを見ると、日食の経過は西から東に向かって順に起こっていきますね。地球が西から東に向かって自転しているのを考えれば、日食は東から西に起こるのでは?
A:日食の経過は「地球の自転」ではなく「月の公転」によって起こっているものです。月は地球の周りを西から東に向かって回っているので、地上に落ちる影も西から東に向かって移動します。
普段はなかなか「月の公転」を実感することはありませんが、日食はその数少ない機会でもあります。
Q:このサイトは誰が作っているの?
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