可視光線と電波で10等級までの微光流星を同時観測

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超高感度の観測装置「トモエゴゼン」とレーダーによる多数の流星の同時観測から、流星の可視光線観測とレーダー観測との関係性が示された。この結果をもとに、地球に降り注ぐ惑星間空間ダストの量も見積もられている。

【2020年11月18日 東京大学

太陽系では、彗星や小惑星によって微小な粒子(惑星間空間ダスト)が絶えず生成されている。このダストの空間密度やサイズごとの量を調べることは、太陽系小天体の活動や微小な粒子の進化を知ることにつながる。地球周辺には質量およそ0.001mgから10mgのダストが分布していると考えられるが、密度が小さいため、人工衛星や探査機では効率のよい調査ができない。一方、ダストが大気と相互作用すると流星として観測されることから、地球大気そのものを巨大な検出装置として使うことができる。

ただし、肉眼で見えるほどの明るい流星になるダストは、質量が比較的大きなものである。質量が10mg以下の小さなダストが引き起こす暗い流星(微光流星)の観測は、これまでもっぱら電波の目で行われてきた。大気圏に突入したダストの周りで発生するプラズマは電波を反射させる性質があるため、大出力の大型レーダー設備から上空へ電波パルスを発射して流星を検出する「ヘッド・エコー観測」が研究に用いられている。

プラズマが反射する電波の量(レーダー反射断面積)が多いほど、そのプラズマを生じさせた流星が明るいことは予想できる。しかし、これまでは微光流星を可視光線で十分にとらえるだけの感度を備えた光学観測装置を使えなかったため、電波での観測結果から実際の流星の明るさ、ひいてはその元となったダストの質量を精度良く求めることはできなかった。

東京大学理学系研究科附属天文学教育研究センターの大澤亮さんたちの研究グループは、東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に搭載された観測装置「トモエゴゼン」を活用して微光流星の可視光線観測を実施した。トモエゴゼンは超高感度CMOSカメラを84個組み合わせた広視野の観測装置で、満月のおよそ84倍の面積を2fpsの動画で連続的に監視することができる。その感度は10等級程度の微光流星にまで対応している。

大澤さんたちは2018年4月18日から21日の4日間にわたり、ヘッド・エコー観測を行う京都大学生存圏研究所信楽MU観測所の「MUレーダー」の上空100kmほどの領域にトモエゴゼンの目を向けた。その結果、合計228件の散在流星を電波と可視光線の両方で確実に観測することに成功した。

105cmシュミット望遠鏡とMUレーダー
(左)「トモエゴゼン」が搭載された105cmシュミット望遠鏡、(右)MUレーダー(提供:(トモエゴゼン)東京大学木曽観測所、(MUレーダー)京都大学生存圏研究所

トモエゴゼンとMUレーダーによる同時観測の概念図
トモエゴゼンとMUレーダーによる同時観測の概念図。 MUレーダーは上空100kmの流星をモニタリングしており、トモエゴゼンはMUレーダーが監視している空域を横から観測する。両施設は直線距離でおよそ173km離れている(提供:東京大学リリース)

この結果に加え、2009年から2010年にかけてMUレーダーと高感度CCDカメラが同時観測した103件の流星を合わせて、レーダー反射断面積と可視等級の関係が調べられた。その結果、2等級の明るい流星から10等級の微光流星まで、ほぼ一つの関係式で表せることが示唆された。

流星のレーダー反射断面積と可視光線の等級の関係
同時観測した流星のレーダー反射断面積と可視光線の等級の関係。およそ2等級から10等級まで、1000倍以上明るさの違う流星について一貫した関係が成り立っている

この関係式をMUレーダーが2009年から2015年にとらえた散在流星のアーカイブデータ15万件に当てはめたところ、ヘッド・エコー観測では0.01mgから1g程度のダストを検出できていることがわかった。また、宇宙から地球へ流星として流入してくるダストの総質量を見積もったところ、1日におよそ1tという結果が得られた。

惑星間空間ダストの質量と地球に流入している個数の関係
MUレーダーがとらえた流星に対応する惑星間空間ダストの質量と地球に流入している個数の関係。惑星間空間ダストが地球へ流入する個数は軽いダストほど多く、その関係はほぼ直線で近似できる。ただし、0.01mgよりも軽いダストは感度不足のため十分にとらえられていない