オーロラ粒子の加速は高度3万km以上から始まっていた

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ジオスペース探査衛星「あらせ」などの観測から、オーロラ粒子の加速領域が、約3万km以上の超高高度にまで広がっていることが初めてわかった。

【2021年1月25日 JAXA宇宙科学研究所

オーロラは宇宙空間から地球に降り込む電子が地球の超高層大気と衝突し、大気が発光する現象だ。肉眼で見えるほど明るいオーロラは、高速で飛来した電子が高度100km程度まで到達して、酸素などの大気分子と衝突することで発生する。このとき電子は地球外から直接大気圏へ突入するのではなく、地球の磁場によって加速され、それにより大気を発光させるほどのエネルギーをもらう。

過去50年間にわたる観測から、オーロラを作り出す電子が加速するのは低高度の冷たいプラズマと高高度の熱いプラズマが混じり合う高度数千kmの領域が中心とされ、高度2万km以上の高度では加速全体への寄与は小さいと考えられてきた。

名古屋大学宇宙地球環境研究所の今城峻さんたちの研究チームは、ジオスペース探査衛星「あらせ(ERG)」が観測した高度約3万km付近領域のデータから、これほどの超高高度でも、典型的な加速域(数百から数千kmの低高度)で観測されてきた特徴と非常によく似た粒子や電磁場の変動が見られることに気がついた。

「あらせ」の想像図
高度約3万km付近領域を飛翔する「あらせ」の想像図(提供:ERG science team)

そこで今城さんたちは、NASAの「テミス」プロジェクトと「あらせ」との協調観測により、超高高度でも電子が十分に加速され、加速された電子が実際にオーロラの発光領域まで降り込んでいるかどうかを検証した。その結果、上下それぞれの方向の電子と陽子の流れや電場・磁場の特性などにおいて、低高度におけるオーロラ加速域の全特徴が確認され、超高高度の加速域が下側の加速域から続いて広がっていることが明らかになった。オーロラを発光させた地球大気に電子が失われて再び磁気圏に戻らないという電子欠損も見られ、理論予測と一致していることも確かめられている。

今回の観測研究は、これまで考えられてきた高度よりはるかに高い高度3万km以上から加速された電子が実際に降り込んで、オーロラ発光に寄与していることを初めて示すものとなった。低高度を中心としたオーロラ粒子の加速域形成という従来の考え方に大きな見直しを迫るものである。

研究成果の概念図
研究成果の概念図。高高度の「あらせ」と地上の全天カメラにより、オーロラ加速領域は「あらせ」の上側にまで広がり、超高高度から加速された電子がオーロラ発光領域まで降り注いでいることが示された

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