極大に向かって増光中、ミラ型変光星のはくちょう座χ
【2025年7月28日 高橋進さん】
はくちょう座χ(χ Cyg)は周期およそ408日で4等級から14等級までダイナミックに明るさが変化するミラ型変光星です。極大と極小の等級差が10等級もあるということは、光度としては1万倍もの差になり、ミラ型変光星の中でもきわ立って光度差が大きな星です。
このはくちょう座χが、今年の3月下旬におよそ13等の極小を迎えた後、ゆっくりと明るさを増してきていました。この星は増光の途中で少し増光速度がにぶる時期があります。たいていはこの増光停滞期は9等くらいの時に見られるのですが、今年は10等級になった6月ごろに停滞期になったようで、6月下旬からは再び順調に明るさを増してきています。
はくちょう座χの光度(2023~2025年)(VSOLJのデータから高橋さん作成)
ミラ型変光星の多くは明るくなっていく時は急速に、暗くなっていく時はわりとゆっくりと変光していきます。はくちょう座χでもこの特徴は見られ、とくに停滞期を過ごした後は急速に明るさを増していきます。その増光速度は日に0.1等ほどにもなると言われます。一般的にミラ型変光星は週に一度くらいの間隔で観測すればよいと言われますが、この時期のはくちょう座χは毎日観測してもその変化の様子がはっきりと感じられます。実際には天候の関係などで連日の観測は難しいかと思われますが、可能な限りで毎日の光度変化を楽しんでいただきたいと思います。
はくちょう座χ周辺の星図(「ステラナビゲータ」で星図作成、比較星光度はAAVSOによる)
今年の極大予報は8月下旬ごろ(筆者の予想では8月22日)と思われ、観測するには最高のタイミングです。極大等級はおよそ4等ですが、明るい極大の時には3等になることもあります。一方で暗めの極大の時は6等にしかならなかった年もあります。「明るい極大の時には、はくちょうの首がねじれたように見える」と言われますが、はたして今年の極大ではどれくらいにまで明るくなり、はくちょう座がどんな姿になるのか、ぜひ多くの皆さんで見守ってみましょう。
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