磁場が操る重力崩壊直前の大質量星の自転

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大質量星でも太陽型星と同様に、磁場の働きで内部の自転の角運動量が運ばれることがシミュレーションで示された。自転は減速するだけでなく加速する場合もあるようだ。

【2026年5月11日 京都大学

一般に恒星は、一生の間に自転速度がだんだん遅くなり、終末期の自転速度は誕生直後の1/100~1/1000になると考えられている。自転にブレーキがかかる理由は、恒星の磁場とプラズマガスが相互作用するためだと推定されている。

たとえば太陽も、誕生直後は現在より約10倍も速く自転していたと考えられるが、数十億年かけて内部の角運動量が表面へと運ばれ、最終的に太陽風の物質が角運動量を持ち去ることで、現在の自転周期(赤道付近で約25日)にまで減速した。

近年、恒星の振動を精密に観測する星震学の手法が大きく発展し、天の川銀河内にある数千もの恒星の内部自転率を測定できるようになった。だが、こうした手法で観測される恒星内部の自転速度はかなり遅く、「磁場の働きで角運動量が星の外へ運ばれる」というこれまでの理論が予測する自転速度よりずっと小さいという問題が生じている。

とくに大質量星では理論と観測の不一致が大きく、その理由として、恒星内部の対流と磁場の複雑な相互作用が理論で考慮されていないことが考えられている。質量が太陽の約8倍を超える大質量星は一生の終わりに重力崩壊を起こして中性子星やブラックホールを残すが、崩壊直前の恒星内部の自転は、重力崩壊や超新星爆発がどんな形で起こるか、その後に形成される天体の自転がどうなるかを決める重要な要素になる。

星震学のシミュレーション例
星震学のシミュレーションの一例。太陽の音波モードの一つを再現したもの。遠ざかる領域が赤、近づく領域が青で示されている。星震学では、星の表面付近で発生する高周波の振動(音波モード)や内部の深い場所で発生する低周波の振動(重力波モード)の周波数を測定して理論モデルと組み合わせ、内部の構造や自転速度などを推定する(提供:NSO/AURA/NSF

京都大学の嶌田遼太さんたちの研究チームは、これまでに太陽と同程度の質量を持つ「太陽型星」についてシミュレーション研究されてきた知見をもとにして、大質量星の振る舞いに関する3次元電磁流体(3D MHD)シミュレーションを行った。太陽型星では3D MHDシミュレーションによって内部の様子が詳しく研究され、内部の対流と磁場の相互作用についての理解が進んでいて、詳しい過程が定式化されている。嶌田さんたちはこの理論を応用し、重力崩壊直前の大質量星内部で酸素の核融合が起こっている層(酸素燃焼殻)付近の振る舞いを詳しく調べた。

その結果、大質量星の磁場や対流と自転の間にも、太陽型星と似た関係が成り立っていることが明らかになった。さらに、酸素燃焼殻付近で磁場が角運動量を運ぶ様子をモデル化したところ、シミュレーションに表れた自転速度の進化をこのモデルで再現できることがわかった。また、大質量星の自転速度は減速するだけでなく、条件によっては加速する場合もあることがわかり、自転率の進化には多様なメカニズムがあるらしいことが示された。

重力崩壊直前の大質量星内部
重力崩壊直前の大質量星内部のイラスト。緑が酸素燃焼殻、黄色がケイ素燃焼殻を示し、どちらの層でも激しい対流が生じている。立方体内部には磁場構造が投影されており、矢印は内部の自転運動を示している。酸素燃焼殻での対流・自転・磁場の相互作用によって自転率が加速・減速する(提供:Lucy O. McNeill)

今回の結果から、一部の大質量星では自転速度に下限が存在する可能性もあると嶌田さんたちは考えている。また、自転がきわめて速く、強い磁場を持つ中性子星「ミリ秒マグネター」や、ガンマ線バーストの親星のような特異な天体が形成されるしくみにも、大質量星内部での自転の加速が関わっているのかもしれない。

今回構築したモデルには、これまで考慮されていなかった対流層での磁場の効果が初めて取り入れられており、角運動量が内向きと外向きの両方に運ばれる効果も考慮している。嶌田さんたちは、恒星の一生を計算する1次元の恒星進化計算にもこのモデルを適用することを目指しているという。

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