衛星プランクがとらえたリングと巨大ループ

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天文衛星「プランク」の観測データから作られた星図に、マイクロ波でとらえた差し渡し200光年の巨大なリングや全天の3分の1を覆うループ構造が浮かび上がった。

【2015年7月9日 RAS

「プランク」は2009年にヨーロッパ宇宙機関(ESA)が打ち上げた天文衛星で、主目的はビッグバンの際に発せられた光の名残りである「宇宙マイクロ波背景放射」の観測であったが、観測データからはマイクロ波で見た天の川銀河の星図も作られている。波長がセンチメートルからミリメートル程度の電磁波であるマイクロ波は、銀河中の磁場を光速に近い速度で回る電子の運動(シンクロトロン過程)や星間空間プラズマの衝突、星間塵の熱振動などで生じる。

新しく公開された星図でプランクは、異常マイクロ波放射(anomalous microwave emission; AME)が見られる広い天の領域を明らかにした。画像はオリオン座の頭に当たる星メイサ(オリオン座λ(ラムダ)星)を取り巻く差し渡し200光年の塵のリングで、AMEがとくに明るい部分の一例である。回転する塵からAMEが発せられているのかもしれない。

メイサを取り巻くリング構造
メイサを取り巻くリング構造。AMEによるマイクロ波を赤、星間プラズマからの放射を緑、磁場を動く電子からの放射を青で表示(提供:M. Peel/JCBA/Planck/ESA、以下同)

また全天図には、シンクロトロン放射の巨大なループ構造「ループ1」も見える。50年以上前に発見された構造だが、太陽系からの距離は400光年~25000光年の間のどこかだろうとはっきりせず、全天の3分の1を覆うその大きさもいまだ正確には測れていない。

破線で示された楕円が「ループ1」
全天図。破線で示された楕円が「ループ1」。色は磁場の角度の違いを表し、明るさは放射の強さに対応している