X線天文衛星「すざく」が観測終了
【2015年8月27日 JAXA】
「すざく」は2005年7月10日に内之浦宇宙空間観測所からM-Vロケット6号機で打ち上げられたX線天文衛星だ。広いX線波長にわたり世界最高レベルの感度を達成するという優れた観測能力をもち、銀河団外縁部に至るX線スペクトルを初めて測定するなど、宇宙の構造形成やブラックホール直近領域の探査を中心に重要な科学的成果を挙げてきた。
目標寿命である約2年を大幅に超え約10年にわたって運用が続けられてきたが、近年では劣化したバッテリーの使用方法を工夫しながら運用されていた。そして今年の6月1日以降、衛星の動作状況を知らせる通信が間欠的にしか確立できない状態が続き、復旧が目指されたものの通信、バッテリー、姿勢制御の状況から観測再開が困難な状態にあると判断され、科学観測終了の発表に至った。
今後は、運用終了に向けた作業が実施される。
1979年打ち上げの「はくちょう」以来、「てんま」「ぎんが」「あすか」「すざく」と、日本のX線天文衛星は世界をリードする活躍を続けてきた。「すざく」に続く日本6番目のX線天文衛星「ASTRO-H」は米欧との共同プロジェクトとして進行中で、今年度中の打ち上げを目指している。
〈参照〉
- JAXA: X線天文衛星「すざく」の科学観測終了について
〈関連リンク〉
- JAXA宇宙科学研究所(ISAS): http://www.isas.jaxa.jp/
〈関連ニュース〉
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