「すざく」銀河団外縁部の物質の分布を明らかに

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【2011年3月28日 ISAS/JAXA

日本のX線観測衛星「すざく」によるペルセウス座銀河団の観測で、銀河団のサイズや重さなどを詳細に調べ、銀河団外縁部の物質の分布を初めて明らかにした。


(ペルセウス座銀河団の2方向についてX線での観測データの図)

ペルセウス座銀河団の2方向についてX線での観測データ。赤い部分がX線で明るく、青い部分が暗いことを示す。波線はビリアル半径と呼ばれ銀河団の端から端までの距離を示す。ここでは直径1160万光年。クリックで拡大(提供:NASA/ISAS/DSS/A. Simionescu et al.; 白枠内:NASA/CXC/A. Fabian et al.)

(ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したNGC 1275の画像)

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した、ペルセウス銀河団の中心に位置している銀河NGC 1275。クリックで拡大(提供:NASA/ESA/Hubble Heritage(STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration)

恒星はたくさん集まって銀河を形成し、その銀河がさらにいくつも集まって銀河団という集団を形成している。銀河団の大きさは差し渡し数百万光年という巨大なものだ。

銀河団は銀河が集まったものではあるが、「普通の物質(注1)」のほとんどは銀河ではなくX線を発する高温のガスとして銀河と銀河の間の空間に存在している。銀河団は非常に巨大なため、この「普通の物質」の比率(注2)は宇宙の典型的な値(注3)と同じだと考えられていたが、これまでの観測では「普通の物質」が非常に少ないと言われていた。

今回「すざく」が観測したペルセウス座銀河団は2.5億光年離れたところにあり、わたしたちがいる銀河系の外にある銀河団としては最も明るいため、銀河団の詳細な研究に非常に適している。しかし「すざく」による研究の前までは、銀河団のガスの性質に関する研究は銀河団の中でも特に明るい中心部分の観測に限られており、外縁部の観測はほとんど行われてこなかった。

中心部分以外について調べるため、「すざく」は2009年から複数回にわたって観測を行い、ペルセウス座銀河団の中心から東と北東の方向の2方向に対して900万光年という非常に広い領域でのX線強度を測定しマッピングを行った。この結果、ペルセウス座銀河団の大きさは直径が1160万光年にもなり、質量は太陽の660兆倍で銀河系の1000倍程度とわかった。

また「普通の物質」は中心部分では中心から外側にかけて徐々に減るように分布していたのに対し、外縁部ではそのような分布ではなく、所々ガスの濃い塊のような領域があることが発見された。この分布を考慮すると、これまで銀河団中に少ないと言われていた「普通の物質」の量が宇宙の典型的な値とよく一致することがわかった。

ガスの塊は外から銀河団に落ちてきたものと考えられるが、これが銀河団の強い重力によって破壊されずに残っていることは、銀河団外縁部でどのような物理現象が起きているのかを解明する重要な手がかりになると考えられる。

注1:「普通の物質」 宇宙はバリオンと呼ばれる我々を構成する物質のほか、正体のわかっていない暗黒物質や暗黒エネルギーといったもので構成されていることがわかっている。ここでの「普通の物質」とはこのバリオンのこと。

注2:「普通の物質の比率」 銀河団の中におけるバリオンと暗黒物質の比率のこと。バリオンは電磁波による観測から、暗黒物質は銀河団が天体に及ぼす重力から求められる質量とバリオンとの差分から推定できる。

注3:「宇宙の典型的な値」 NASAのWMAP衛星による、ビックバンの名残の光である宇宙マイクロ波背景放射の測定から、全宇宙の「普通の物質(バリオン)」、ダークマター、ダークエネルギーの比率が求められている。