X線天文衛星「すざく」が通信不安定に
【2015年6月15日 JAXA】
2005年7月10日に打ち上げられたX線天文衛星「すざく」(ASTRO-EII)は、ブラックホールや超新星残骸、銀河団プラズマなど宇宙の高エネルギー天体や現象を観測し、銀河団外縁部に至るX線スペクトルを初めて測定するなど、様々な成果をあげてきた。当初の目標寿命であった約2年の観測期間をはるかに超える約9年にわたってデータを取得し続けてきたが、バッテリーの劣化が進み、バッテリーの使用方法を工夫しながらの運用が続けられていた。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の発表によると、6月1日から、「すざく」の動作状況を知らせる通信が間欠的にしか確立できない状態に陥っているという。通信不良は電力不足によるものと推測されており、状況把握が進められている。
衛星から間欠的に送られてくるデータから推定すると、バッテリーが機能せず、太陽電池パドルに太陽光が当たっている時間しか衛星に電源が入らない状態のようだ。姿勢制御ができておらず、およそ3分間に1回の周期で無制御に回転しているとみられる。
運用チームでは、今後少なくとも1~2か月間は正常観測への復帰を目指し、姿勢の安定と、安定した電源を確保する方法を模索していくという。
〈参照〉
- JAXA: X線天文衛星「すざく」の状況について
〈関連リンク〉
〈関連ニュース〉
- すざくの観測成果(2011年~):
- 2015/03/27 - 銀河中心ブラックホールが大量の物質を吹き飛ばす
- 2015/03/18 - 超新星残骸に大量のニッケル 究極的核融合プロセスの初証拠 )
- 2014/09/19 - ガスが増えると切り替わる、銀河中心ブラックホールのX線放射
- 2014/06/04 - レモン型マグネターの内部磁場強度は1兆テスラ
- 2013/11/05 - 「すざく」が明らかにした鉄の大拡散時代
- 2013/07/08 - Ia型超新星の名残から、非対称な爆発を示す元素分布を観測
- 2013/04/10 - 「ケプラーの超新星残骸」が示唆するIa型超新星の多様性
- 2013/02/21 - 高速回転する超大質量ブラックホール
- 2012/07/04 - X線が伝える新たな星の胎動
- 2011/11/28 - 「すざく」、銀河団プラズマの速度を世界初測定 暗黒物質を知るカギに
- 2011/03/28 - 「すざく」銀河団外縁部の物質の分布を明らかに
- 2011/01/19 - 超新星残骸から次世代の芽 「あかり」と「すざく」が塵生成の兆候を観測
関連記事
- 2023/09/07 X線分光撮像衛星「XRISM」と小型月着陸実証機「SLIM」、打ち上げ成功
- 2016/07/19 2020年を目標に「ひとみ」の後継機打ち上げ
- 2016/05/26 JAXA、「ひとみ」の異常事象報告書などを文部科学省へ提出
- 2016/04/28 X線天文衛星「ひとみ」の復旧断念
- 2016/04/18 「ひとみ」姿勢異常の推定メカニズムを公表
- 2016/04/11 「ひとみ」をすばる等で観測、通信は依然復旧せず
- 2016/03/28 X線天文衛星「ひとみ」が通信異常
- 2016/02/17 X線天文衛星「ひとみ」打ち上げ成功
- 2015/10/21 「すざく」観測で判明、1000万光年スケールで均一な元素組成
- 2015/08/27 X線天文衛星「すざく」が観測終了
- 2015/03/27 銀河中心ブラックホールが大量の物質を吹き飛ばす
- 2015/03/18 超新星残骸に大量のニッケル 究極的核融合プロセスの初証拠
- 2014/09/19 ガスが増えると切り替わる、銀河中心ブラックホールのX線放射
- 2013/11/05 「すざく」が明らかにした鉄の大拡散時代
- 2013/07/08 Ia型超新星の名残から、非対称な爆発を示す元素分布を観測
- 2013/04/10 「ケプラーの超新星残骸」が示唆するIa型超新星の多様性
- 2013/04/08 ブラックホールに落ち込むガスの急激な加熱 100分の1秒で10億度以上に
- 2013/02/21 高速回転する超大質量ブラックホール
- 2011/11/29 回転ブラックホールが作る宇宙の「竜巻」
- 2011/11/28 「すざく」、銀河団プラズマの速度を世界初測定 暗黒物質を知るカギに