土星のA環は他の環より高密度で若い可能性
【2015年9月4日 NASA JPL】
土星は約29年で公転しており、その半分である約15年ごとに、赤道の真上から太陽が照らす。地球での「春分、秋分」にあたるこのタイミングでは土星の環の真横から太陽の光が当たるので、見かけ上、土星の環が消失したように見える。また、この前後の数日間には環の中に見慣れない影や波立ったような構造が現れ、環の温度が下がる。
NASAジェット推進研究所の森島龍司さんたちの研究チームは、土星が春分を迎えた2009年8月ごろに探査機「カッシーニ」が取得したデータを調べ、コンピュータでモデル計算した温度データと比較した。すると、環の大部分では温度の下がる様子がモデルと一致していたが、明るい環のうちで一番外側にあるA環の温度だけはモデル計算よりも高いことが示された。
さらに詳しく調べたところ、A環を構成する粒子の大半が1mくらいの大きさで、成分のほとんどが氷であると考えれば、観測されたような温度に最もよく合うことがわかった。
粒子が一部分に集まっている原因としては、たとえば過去数億年以内に衛星が巨大天体の衝突で破壊されたという可能性がある。残骸が環全体に均等に拡散するほど時間が経っていないということだ。
あるいは、複数の小衛星が環の内部に移動し氷の粒を外から運んできたのかもしれない。この小衛星たちが土星や他の衛星の重力で破壊され、氷塊がA環に広がったという考えだ。こうした説が正しければ、A環(とくに温度上昇が顕著な中央部)の年齢は、土星本体と同じくらい古いと考えられている他の部分よりもずっと若いと推測される。
関連商品
〈参照〉
- NASA JPL: At Saturn, One of These Rings is not like the Others
- Icarus: Incomplete cooling down of Saturn’s A ring at solar equinox: Implication for seasonal thermal inertia and internal structure of ring particles 論文
〈関連リンク〉
- NASA: http://www.nasa.gov/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
- アストロアーツ:
- 投稿画像ギャラリー: 2015年 土星
〈関連ニュース〉
- 土星のA環:
- 2014/04/15 - 新衛星誕生の瞬間? 土星の環に痕跡
- 2007/11/09 - 土星のA環に、新たに衛星の残骸8個を発見
- 2007/03/02 - 土星探査機カッシーニ 昇りつめてとらえたリングの絶景
- 2015/08/19 - 土星のF環と羊飼い衛星の起源をシミュレーションで解明
関連記事
- 2024/11/01 2024年11月11日 月と土星が接近
- 2024/10/07 2024年10月14日 月と土星が接近
- 2024/09/10 2024年9月17日 月と土星が大接近
- 2024/09/09 17日にYouTubeライブ「中秋の名月 オンライン観月会」
- 2024/09/02 2024年9月9日 土星がみずがめ座で衝
- 2024/07/18 2024年7月25日 土星食
- 2024/07/17 2024年7月24日 月と土星が大接近
- 2024/06/21 2024年6月28日 月と土星が大接近
- 2024/06/12 【特集】土星(2024~2025年)
- 2024/04/24 2024年5月4日 細い月と土星が接近
- 2024/04/04 2024年4月中旬 火星と土星が大接近
- 2024/03/14 2024年3月下旬 金星と土星が大接近
- 2024/01/04 2024年1月14日 細い月と土星が接近
- 2023/11/13 2023年11月20日 月と土星が接近
- 2023/10/17 2023年10月24日 月と土星が接近
- 2023/08/24 2023年8月30日 月と土星が接近
- 2023/08/21 2023年8月28日 土星がみずがめ座で衝
- 2023/07/28 2023年8月3日 月と土星が接近
- 2023/06/02 2023年6月10日 月と土星が接近
- 2023/06/01 【特集】土星(2023~2024年)