タイタン大気中の有機分子の分布に偏り

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アルマ望遠鏡を用いた観測から、土星の衛星タイタンの有機分子の分布に予想外の偏りが見られた。生まれて間もないころの地球と似ていると考えられるタイタンの大気で、短いタイムスケールで分子が作られることを示す成果だ。

【2014年10月27日 アルマ望遠鏡

土星の衛星タイタンは厚い大気と湖、川、海を持ち、太陽系の中で最も地球に似た天体と言える。しかしその極寒の表面にあるのは水ではなく、メタンやエタンのような有機分子の液体だ。またタイタンの大気は、太陽光と土星の磁場のエネルギーによって多彩な有機分子が作られる「天然の化学工場」として長く研究者の興味を引き付けてきた。現在のタイタンの大気は、生まれて間もないころの地球の大気と化学的な特徴が似ていると考えられており、地球の歴史を探るうえでも重要なターゲットである。

NASAゴダード宇宙飛行センターのマーティン・コーディナーさんらの国際研究チームは、アルマ望遠鏡の観測から、タイタンの大気におけるシアン化水素(HCN)の異性体HNCとシアノアセチレン(HC3N)の分布を調べた。

タイタン大気中の分子の分布
アルマ望遠鏡がとらえたタイタン大気中の分子の分布(提供:NRAO/AUI/NSF; M. Cordiner (NASA) et al.)

シアノアセチレンが全体としてタイタンの極域上空に集まっているのは探査機「カッシーニ」の観測通りだったが、さらに地表高度ごとの分布調査から、最も上層(地表から300km以上)の大気では濃集が両極上空から少し(緯度にして約25度)ずれていたことがわかった。東西方向の強い風(秒速60m)が吹く中で、分子の分布の偏りはすぐに均一化されると考えられていたため、このような偏りは予想外のものだった。これは、分子の形成がとても短いタイムスケールで起こっていることを示しているという。

今回の発見は、アルマ望遠鏡にとって太陽系主要天体の大気を対象とした初めての観測成果となる。タイタンをはじめとする太陽系天体の大気をよりよく理解するための観測が今後も期待される。

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