- 宝島社 刊
- 18.9 x 13cm、243ページ
- 2014年9月
- ISBN 978-4-8002-2639-6
2009年にすばる望遠鏡で発見された巨大ガス天体「ヒミコ」について、筆者は前々回の本欄でご紹介した「宇宙ビジュアル大図鑑」で初めて知った。そして本書でその詳細を知ることになった。
著者はこの天体の発見者であり、2005年と2007年にすばる望遠鏡で、2007年にケック望遠鏡で、2010年にハッブル宇宙望遠鏡で、2012年にアルマ望遠鏡でも観測を行っている。筆者のように、自宅で5cm双眼鏡と肉眼で変光星を観測しているアマチュアには手も足も出ない、大観測天文学者である。ヒミコの実体研究はもちろんのこと、大望遠鏡を用いた観測研究の実践が詳細に書かれた本書は誠に目を見張るばかりである。特に研究チーム作りの部分は面白く、会社などの組織作りにおいて大いに役立つだろう。
ヒミコが持つさまざまな謎はこれから解明されることだが、その解明のための大型望遠鏡の開発に関する説明は、本書の核心部分の一つ。口径30m望遠鏡や100m望遠鏡の可能性についても他書にはなく詳細に書かれている。もちろん本書の主題はヒミコがどのような天体なのかを解明することだが、5個の仮説とさらにもう1つの仮説の詳細は、本書を熟読されたい。また、著者後書きが秀逸だ。そこには、小学校1年生の時に学級文庫で出会った本のことが記されている。感動のあまり涙が止まらなくなったそうだ。出会いってこうなのですね。本書評がその役割を果たせば、誠に嬉しい限りである。