前回は、画像を自動で取得するためのスクリプトの使い方について触れました。天気監視システムや天文台をモニターするソフトとともに、スクリプトを使えば、手動で開始や停止を行わずに、(雲のない晴れ渡った夜なら)空が暗くなるとともに観測を開始し、日の出とともに終了できるわけです。
ただし、以前ハワイでは完全に澄みきった夜がそれほど多くないと以前お話したのを覚えてますでしょうか。私は今でも、夜間に天文台上空を通りすぎる雨雲がないかどうかチェックしなければなりません。日本の皆さんも、ぜひ天気のチェックは忘れないでくださいね。
さて、そのほかに、ACPのスクリプトを使ったコマンドについてお話しました。コマンドの種類はたくさんありますので、私が使っているいくつかについて説明しましょう。
ACPを使う場合、スクリプトの書き方は、2つの方法で知ることができます。
ACPのユーザーインターフェースには、完璧なヘルプファイルが用意されています。さらに、実際に使用する前に、”DC-3 Dreams”というシミュレーターにサインアップして、練習することができます。シミュレーターへのリンクは、次の通りです:Share Your Sky! - DC-3 Dreams - Create a User Account(サインアップページ(英文のみ))。
では、以下をご覧ください。いくつかのコマンドの例とその説明です。
#interval 120; 120秒の露出
#sets 6; 撮像する画像の枚数、または、別の#repeatというコマンドを単独の撮像対象に対して使うことができます。
#binning 1; 1×1、2×2、3×3などのCCDカメラに合わせたビニングを使うことができます。
#filter clear; 単独の天体のデータを収集するので、クリアフィルターを使います。
#MINSETTIME 00:05; 露出と露出の間で、最低5分のインターバルを確保します。
#POINTING ; 導入と画像解析(注)
CK08N010 2009 09 25.8756 2.783626 0.997157 100.8103 357.4721 115.5204 20090618 9.0 4.0 C/2008 N1 (Holmes)
#CHAIN C:\Program Files\ACP Obs Control\WebDocs\Plans\Vishnu\C2006 Q1 (McNaught).txt
#CHAIN;この場合撮像の対象は彗星です。コマンドラインは、空白部分を含めて正確に記載してください。間違いがあればエラーが出ます。なお、彗星の軌道要素は、ハーバード・スミソニアン天体物理センターのホームページ「Orbiatal elements: Comets - MPC format 」にありますので、コピー&ペーストして使ってください。
#CHAINは実にすばらしいツールです。「Observing Plan」が1つ完了すると、次を呼び出してくれます。また、観測が終わったら、ドームを閉じて、カメラのスイッチを切るといったコマンドを加えることもできます。以下に昨夜私が使ったものを例としてご紹介しておきます。
#CHAIN C:\Program Files\ACP Obs Control\Plans\LateNight.txt
LateNight.txtは、1つの「Observing Plan」として扱われます。スリッターを閉じるというコマンドの代わりに、追尾を中止して塵除けのカバーを閉じるといったコマンドを加えました。希望するコマンドを加えることができますので、自動で夜明け前に天文台を閉じるように設定されていない場合なら、次に使用するユーザーのために天文台をスタンバイ状態にもできます。なお、このスクリプトを書いてからACPのユーザーインターフェースからアップロードするまでの所要時間は、たった数分です。
ちなみに、私は、天文台コード(F59 201.941000.932037+0.361160Ironwood Remote Observatory, Hawaii US)を取得するためにこのスクリプトを使いました。なお、天文台のコード表は、以下のところにあります(http://www.cfa.harvard.edu/iau/lists/ObsCodes.html)。
以前にもお話したように、スクリプトのアップロードは、ユーザーインターフェース上で行うことができ、すぐに撮像に移れます。撮像に関するスクリプトの状態も表示され、ログファイルが参照用に保存されます。(コンソールログファイルをお見せできないことはありませんが、あまりに長すぎる控えました)ソフトウェアのバージョン情報から、天気や設備の状況にいたるまでの、天文台が行うすべての動作はまずコンソールに表示され、その後にスクリプトのエラーチェックが始まります。
このような初期段階が終了して、「Observing Plan」が始まれば、天文台は動き出します。なお、(さきほども触れたように)曇りがちで雨が心配な時は、状況によってスクリプトを中止して屋根を閉じるかどうかチェックします。チェックしてみて中止の必要がないとわかった場合、(ここがACPのすごいところですが)「Acquire Image」ボタンをクリックするだけで、いったん中止したところから、撮像のプロセスを再開できます。
またコンソールは、撮像にかかる合計時間も知らせてくれますが、回転や座標の更新にかかる時間は含まれません。前述の段階が完了すると、撮影前に望遠鏡の動きや正確な追尾のための画像解析などに関する説明が表示されます。
すべての画像が解析されると、FITSヘッダーに書き込まれます。それが完了すれば、画像は圧縮されダウンロードが可能な状態になります。スクリプトはこれら全ての作業が完了するまで続行します。
私が観測に使っている別のスクリプトは、モザイクと呼ばれるものです。ほとんどの天体写真家が、カメラや望遠鏡の視野に対して大きすぎる画像を取得する際にモザイクを使用すると思います。
この場合、私はアメリカでポピュラーなプラネタリウムプログラムの座標を使っています。中心点座標を選んで、カメラと望遠鏡の視野に入れます 。座標は、コピーしてウィンドウズのメモ帳に貼り付けます。そしてそのファイルをACPのモザイク生成スクリプトの上で、ドラッグ&ドロップするだけです。
モザイク合成画像を取得するための「Observing Plan」を見てみましょう。最初に出てきたのと同じコマンドが出てきますが、ここでは、露出が2時間にわたるため、#autofocusが追加されていて、3枚撮影されるごとに望遠鏡がフォーカスし直します。
以下のリストには、8つのポイントが書かれています。小惑星のサーベイを行うために、同じ「Observing plan」が3回繰り返されます。
一晩に、複数のモザイク画像撮影やサーベイを複数設定できます。1つの「Observing plan」で8つのポイントを使って、子午線の西側や東側を撮影します。計4つの「Observing plan」によってかなりの空域をカバーできることになります。ちなみに、われわれの視野は40" × 60.3"です。
#sets 3
#filter Clear
#count 1
#interval 120
#binning 1
#autofocus #POINTING
Mosaic_0 19.8327294 14.09874395
Mosaic_1 19.8819586 14.12108397
Mosaic_2 19.83032394 15.15979082
Mosaic_3 19.87979167 15.18223919
Mosaic_4 19.8278861 16.22064571
Mosaic_5 19.87761175 16.24321123
Mosaic_6 19.82541285 17.28167225
Mosaic_7 19.87541638 17.30436401
#CHAIN C:\Program Files\ACP Obs Control\Plans\LateNight.txt
画像を取得するスクリプトの使い方はさまざまありますが、いずれを使っても、ACPや他のソフトウェアと同じように目指すゴールに到達することができます。私は、いろんな機会を通じて、アプレットを開発する創造性豊かな人に出会いました。常々「Observing plan」を生成するソフトや「Observing plan」そのものを作り出してしまう人間の発想力に驚かされます。
また、ソフトウェアを使う時、ソフトを開発した会社がマニュアルにも書いていない方法を見つけることができます。どんなソフトの問題でも、インターネット上に行けば、その解決手段を発見したり、知っている人が必ずいるはずです。
ソフトウェアというものは、データ収集を強化すると言う意味で、実にすばらしいツールです。個人的に、撮影中にずっとアイピースを覗きながら一晩中起きているのは、楽しいことではありませんので、とても有難いことです。もしかしたら、少し歳をとってきたので、美容のために?じゅうぶんな睡眠を身体が必要としているのかもしれませんが・・・。
次回は、インターネットの接続に関するお話です。以前に3Gセルラーモデムを使っているとお話しましたが、やはりいろいろ制限が多く、動作も遅く、あまり確実とはいえません。こちらでは多くのプロバイダーが5ギガバイトという制限を設けていて、それを超えると追加料金が発生します。次回は、インターネットの問題について、この1ヶ月間で学んだことについてお話します。
注:画像に撮影された星の位置を恒星カタログと比較して、導入時の誤差を解析すること。
※Ironwood Observatory(Ken Archer氏)による、リモート天文台の建設やそのほかのサービスに関する問い合わせは、「お問い合わせフォーム」から、(営業部宛まで)ご連絡ください。