発見から400年、ケプラーの新星の謎を解く

【2004年10月13日 JPL News Releases

ちょうど400年前の1604年10月9日、有名な天文学者ヨハネス・ケプラーたちが、へびつかい座に現れた超新星「ケプラーの新星」に気づいた。過去1000年で、われわれ天の川銀河内に発見された超新星は6つあるが、その中で唯一ケプラーの新星だけが、どのような種類の星の爆発であったのか明らかになっていない。この超新星の謎を解き明かそうと、ハッブル宇宙望遠鏡をはじめとして、スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡、チャンドラX線観測衛星を使った観測が行われた。

(ケプラーの新星の画像)

ケプラーの新星。大きな画像は、可視光、X線、赤外線画像を合成したもの。(左下2点)チャンドラによるX線画像、(下左から3つ目)ハッブルによる可視光画像、(右下)スピッツァーによる赤外線画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, R. Sankrit and W. Blair (Johns Hopkins University)

ハッブル宇宙望遠鏡では可視光での観測、スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡では赤外線での観測、そしてチャンドラX線観測衛星ではX線での観測が行われた。結果、14光年の大きさにガスとちりが泡のような形で広がっているようすが捉えられ、この構造が時速600万キロメートルのスピードで膨張していることがわかった。なかでも特徴的なのは、高速で拡大し続けるシェル構造に大量の鉄が含まれている点で、さらにこのシェルを取り巻いて広がる衝撃波によって、外側の星間ガスやちりが吹き飛ばされている。

超新星爆発の際に生じた衝撃波は、時速3500万キロメートルもの猛スピードで一気に広がる。衝撃波は周辺の空間へと広がり、周囲のガスやちりはシェル構造の中へ集められ、爆発時に星から放出され広がる物質とぶつかってX線を放射するほどの高温に熱せられるのだ。

ハッブル宇宙望遠鏡による可視光観測では、明るく光る点の集まりが捉えられているが、これは衝撃波が周囲のガスの濃いところとぶつかっている場所だ。また、スピッツァー宇宙赤外線望遠鏡によって捉えられているのは衝撃波によって集められた微細なちり粒子からの赤外線で、ハッブルが捉えている密度の高い部分、球状に広がる衝撃波を写し出している。チャンドラX線観測衛星では、高温のガスが捉えられている。これは主に、衝撃波が達した部分のすぐ内側の領域に存在する高エネルギーの高温ガスを捉えたものだ。また、低温、低エネルギーの領域も写し出されており、爆発した星から放出された物質の場所を示している。

このように複数の望遠鏡を使って異なる波長で観測することで、超新星残骸の謎に深く迫ることができる。研究チームでは、今後さらにデータの分析が進むことでケプラーの新星に関する謎のいくつかが解き明かされるだろうと話している。