またもや板垣さん、NGC 232に超新星2006et、M31に新星を発見
【2006年9月4日 CBET 615, 616 / VSOLJニュース(157)/ 国立天文台 アストロ・トピックス(238)】
山形県山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんの超新星2006epの発見のニュースを9月1日にお伝えしたばかりですが、またもや板垣さんがNGC 232に超新星2006etを、さらにアンドロメダ座大銀河M31に新星を発見されました。今年の超新星発見数は5個目、通算21個目で、自らお持ちの国内最多通算発見記録を塗り替え続けています。
M31の新星
まず、板垣さんによるM31の新星についての発見報告によると、新星の位置は以下のとおりです。
赤経 00時42分33.16秒(±0.02秒) 赤緯 +41度10分06.8秒(±0.1秒)(2000年分点) M31の新星の星図
また、9月1.588日(世界時、以下同様)に20.0等だった新星の明るさは、その後の3.51日に16.5等に、3.57日には16.0等まで明るくなったことが報告されています。
超新星2006et
一方、超新星2006etは、9月3.77日前後に板垣さんがとらえた画像から16.1等級の明るさの超新星として発見報告されました。超新星の位置は以下のとおりで、母銀河であるNGC 232の中心から東に0.3秒角、北11.0秒角にあたります。
赤経 00時42分45.82秒(±0.02秒) 赤緯 -23度33分30.4秒 (±0.1秒)(2000年分点) 超新星2006et周辺の星図
なお、8月30.68日に板垣さん自身による画像には、17.0等級の明るさの2006etが捉えられていましたが、8月24.69日に撮影した画像には18.5等級より明るい天体はなく、それ以前の画像にも19.0等級以上明るい天体がないこと、さらにDSSによる画像にも明るい天体はないことがあわせて報告されています。
(VSOLJニュース)
山形市の新天体捜索者板垣公一(いたがきこういち)さんは、3日前に超新星2006epを発見した(vsoljニュース 156)ばかりですが、9月3日には、一夜にして、アンドロメダ座大銀河M31に系外新星を、くじら座の銀河NGC 232に超新星2006etを相次いで発見しました。異なる種類の天体を、一晩に発見したのは、おそらく他に例を見ない壮挙と言えるでしょう。
まず、M31の新星です(位置は略)。9月1.588日(世界時、以下同様)の板垣さんの観測では、20等級より明るい天体はなかったこの位置に、急速に明るくなり、そして暗くなっていった星がとらえられたのです。板垣さんの観測によると、
3.5161日 | 16.5等 |
3.5202日 | 16.4等 |
3.5384日 | 16.3等 |
3.5505日 | 16.2等 |
3.5631日 | 16.1等 |
3.5768日 | 16.0等 |
と、もっとも明るくなった後、
3.5976日 | 16.1等 |
3.6497日 | 16.2等 |
3.7915日 | 16.3等 |
3.7999日 | 16.4等 |
と、次第に暗くなっていくようすが見事に描き出されました。今夜はどれほどの明るさになっているでしょう。また、アンドロメダ座大銀河をこの数日以内に撮影された方がいらっしゃったら、ぜひこの新星をチェックしてみてほしいところです。
一方の超新星は、この系外新星の観測中に発見されました。くじら座の銀河NGC 232に現われたもので、3.77日に撮影した画像に16.1等で写っていました。8月30.68日に板垣さんが撮影した画像を改めて調べてみると、この天体が17.0等の姿を見せていたことが判明し、新天体であることが確実になったのです。
超新星の位置は以下のとおりです(略)。NGC 232の中心からほぼ真北に11秒角のところにあたります。今後のスペクトル型の観測などが楽しみです。
これまでに、同一夜に2つの彗星を発見した例(森敬明さんなど)、2つの超新星を発見された例(板垣さん自身など)はありますが、新星と超新星を一晩で発見されたというのは初耳です。世界的に見ても、類を見ない快挙と言えるでしょう。
(国立天文台アストロ・トピックス)
8月30日に超新星を発見したばかりの山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんが、9月3日(世界時)にも、約16等星の新星と約16等星の超新星を立て続けに発見しました。
新星はアンドロメダ座の銀河M31(=NGC 224)の中、超新星はくじら座の銀河NGC 232の中にあり、ともに口径60センチメートルの反射式望遠鏡(f/5.7)にCCDを据え付けて撮影した画像から発見されました。
これらの発見は兵庫県の中野主一(なかのしゅいち)さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、超新星については「2006et」と命名されました。以下、板垣さんによって発見された新星と超新星についての観測値です。
〈新星〉
(等級と位置は略)板垣さんは、この天体が明るくなる以前からの観測を報告しています。9月9月1.588日(世界時、以下同様)には20等より明るい天体はありませんでしたが、9月3.5161日 16.5等、9月3.5202日 16.4等、9月3.5384日 16.3等、9月3.5505日 16.2等、9月3.5631日 16.1等、9月3.5768日 16.0等となっており、なお増光中の模様です。
なお、M31(=NGC 224)銀河はアンドロメダ座大銀河として有名です。私たちの銀河から遠くない距離にあるため、秋冬期の夜には、双眼鏡でも観望することが可能な銀河の1つです。
〈超新星〉
(等級と位置は略)この天体はNGC 232の中心核位置から、東に約0.3秒角、北に約11.0秒角ほど離れたところにあります。板垣さんは8月30日にもこの天体を観測しており、そのときの明るさは17等でした。また、8月24日もこの位置を観測していますが、その画像にはこの天体は写っていませんでした。
今回の発見は、ご自身の8月30日の超新星発見(国立天文台 アストロ・トピックス 236)に続くものです。これで新星を除く板垣さんの超新星発見数(独立発見を含む)は通算21個となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに伸ばしました。
M31の新星、超新星2006etの位置
この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ Ver.7」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後、「データ更新」を行なってください。