周期彗星の番号登録が200個に到達
【2008年6月23日 MPEC 2008-L45】
楕円軌道をもつ彗星は太陽系を周期的にめぐっている。ハレー彗星は1P、エンケ彗星は2Pというように、天文学者はある条件を満たす周期彗星に番号を付けてきた。2008年6月、ラーセン彗星の検出により、その番号が200番に達した。
2回以上の出現が観測され番号登録された周期彗星が200個に達した。「200P」という符号が与えられた彗星は、1997年11月にアメリカのJeff Larsenさんによって発見され、2008年6月にアメリカのJ.V. Scottiさんによって検出されたラーセン彗星(P/1997 V1 = P/2008 L1(Larsen))だ。「200P」として、登録番号をもつ周期彗星の仲間入りを果たした。
国際天文学連合(IAU)が定めている彗星の符号のルールは以下のようになっている。彗星の発見が報告されるとまず、彗星(Comet)をあらわす「C/」に続いて発見年、月、報告順を元に仮符号(認識符号とも言う)が必ず与えられる。例えば、「C/1997 V1」という符号を読み解くと、発見年は「1997」、発見日は11月3日だったので11月上旬を示す「V」というアルファベットで示され、11月上旬の1番目に報告された彗星なので「V1」となっている。発見年の数字と発見月のアルファベットの間には空白を挿入するのが正しい表記法だ。
彗星の位置観測によって楕円軌道をもつ彗星であることが判明すると、単に彗星を示す「C/」から、周期彗星(Periodic comet)を示す「P/」へと変更される(ケンタウルス族の場合には回帰ではなく4回の衝が観測されていることが条件となる)。さらに、周期彗星の登録番号(確定番号とも言う)が与えられるには、彗星がいったん太陽から遠ざかったあと、再び太陽に近づいてきた姿を検出する必要がある。つまり周期彗星であっても、2回の出現で観測されていなければ、登録番号の対象とはならない。登録番号のない周期彗星の予報位置の付近を捜索して検出を狙う観測者もいる。
2008年6月9日にアメリカのJ.V. Scottiさんによって20等で検出されP/2008 L1という仮符号がついた彗星は、周期が約10.9年と計算されていたラーセン彗星(P/1997 V1)の回帰であることが確認された。かくして周期彗星の登録番号が与えられ「200P」に昇格したのだ。1997年の発見者Larsenさん、2008年に検出したScottiさんとも、アメリカのキットピークで太陽系小天体を研究するSPACEWATCH® Projectの観測者だ。
番号登録された200個の中には、ビエラ彗星(3D/Biela)のように「P/」ではなく「D/」がついている彗星が9個ある(2008年6月23日現在)。これは長期間観測されていない「見失われた」周期彗星(lost comets)だ。また、新発見の彗星でも、過去に記録された彗星と同一であることがわかった場合には、登録番号の対象となる。2002年に話題となった池谷・張彗星(C/2002 C1)はこの例で、1661年の彗星と同定されたため「153P」になった。
彗星には個性があり、発見事情も様々だ。200個のうち、日本人が発見した彗星は9個含まれる。天文歴の長いファンにとっては、思い出の彗星もあるだろう。番号付きの彗星が200個に達したのを機に、人類が何世代にもわたって記録してきた周期彗星のリストを眺めてみるのもよいだろう。
(※本記事中の日時はすべて世界時です。)
符号 | 彗星名 | 発見年 | 発見者(日本人) |
---|---|---|---|
45P | 本田・ムルコス・パジュサコバ彗星 | 1948 | 本田実 |
70P | 小島彗星 | 1970 | 小島信久 |
72P | デニング・藤川彗星 | 1978 | 藤川繁久 |
76P | ウェスト・コホウテク・池村彗星 | 1975 | 池村俊彦 |
98P | 高見澤彗星 | 1984 | 高見澤今朝雄 |
112P | 浦田・新島彗星 | 1986 | 浦田武、新島恒男 |
144P | 串田彗星 | 1994 | 串田嘉男 |
147P | 串田・村松彗星 | 1993 | 串田嘉男、村松修 |
153P | 池谷・張彗星 | 2002 | 池谷薫 |
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