ALMAの受信機開発チーム、超伝導科学技術賞を受賞
【2010年3月12日 国立天文台 アストロ・トピックス(538)】
国際望遠鏡プロジェクトであるアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA、アルマ)には、数種類の受信機が搭載されている。そのうちの1つを開発した、国立天文台先端技術センターの鵜澤佳徳准教授をリーダーとする開発チームが、「超伝導科学技術賞」を受賞した。
アストロ・トピックスより
超伝導に関係する分野で卓越した研究成果をあげた研究者や開発者、また、超伝導研究推進に貢献した人物などに授与される「超伝導科学技術賞」(注1) を、国立天文台先端技術センターの鵜澤佳徳(うざわよしのり)准教授をリーダーとする開発チーム(注2)が受賞しました。
国立天文台のバンド10受信機開発チームは、情報通信研究機構の研究開発者と協力して、ALMA(アルマ:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計) に搭載される受信機の開発を行っています。
ALMAには、宇宙からの微弱な信号を効率よく受信し伝送することを可能にするために、究極の超伝導技術や半導体技術などを利用した10種類の受信機が搭載されます。その中でも、バンド10受信機(周波数帯787-950GHz)は、もっとも開発が難しいとされてきました。開発チームは、昨年、このバンド10受信機の開発に成功し(国立天文台アストロ・トピックス 481)、この業績が高く評価されたことが、今回の受賞につながりました。
鵜澤氏は、「受賞者だけでなく、それ以外の多くの方のご支援のおかげだと思っています。今後の課題も多くありますが、ALMAの完成を目指して開発を続けていきます」と、喜びを口にしています。
この授賞式は、超伝導科学技術研究会主催の第36回シンポジウム開催とともに、4月13日にタワーホール船堀(東京都江戸川区)にて執り行われる予定です。
今回の受賞以外にも、開発チームの小嶋崇文(こじまたかふみ)氏が、バンド10受信機に用いられるSIS(注3)ミキサの開発で、第27回(2009年秋季)応用物理学会講演奨励賞を受賞したほか、このSISミキサの写真が、英国の物理学論文誌「Superconductor Science and Techonology」2009年11月号の表紙を飾るなど、バンド10受信機の開発が国内外で高く評価されています。
注1:社団法人未踏科学技術協会が年1回授与する賞で、今年で14回目となる。最初の高温超伝導体が発見された年から10年目に当たる平成8年度に、同法人の超伝導科学技術研究会によって創設され、以降毎年、超伝導科学技術の研究に関して卓越した業績を残された方々に授与されている
注2:開発チームのメンバー
- 鵜澤佳徳(うざわ よしのり、国立天文台)
- Kroug Matthias(くろっぐ まてぃあす、国立天文台)
- 武田正典(たけだ まさのり、情報通信研究機構)
- 小嶋崇文(こじま たかふみ、大阪府立大学大学院、国立天文台)
- 藤井泰範(ふじい やすのり、国立天文台)
- 野口卓(のぐち たかし、国立天文台)
- 王鎮(わん つぇん、情報通信研究機構)
注3:Superconductor Insulator Superconductorの略、超伝導体-絶縁体-超伝導体の意味。受信機の中心部として、宇宙からの微弱な信号を検出するために用いられる