アルマの日本製受信機、初スペクトルの取得に成功
【2010年7月30日 ALMA】
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA、アルマ)で、日本が製造した2種類の受信機が、天体からのスペクトルを取得することに初めて成功した。
巨大電波望遠鏡アルマ(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)は、日本が主導する東アジアと北米、ヨーロッパ、チリ共和国が参加する国際的なプロジェクトで、現在チリのアタカマ砂漠で建設が進められている。
アルマは、ミリ波・サブミリ波という30GHz(ギガヘルツ)から950GHzの周波数帯の観測で、可視光では決して見ることができない宇宙をとらえ、銀河の誕生や生命のもととなる材料の起源、そのほかさまざまな宇宙の謎の解明に挑む。
アルマに搭載されている受信機は10種類の周波数帯(バンド1から10)に分けられており、プロジェクトの参加各国に開発・製造の担当が割り振られている。日本の国立天文台 三鷹キャンパスの先端技術センターは、バンド4(125〜163GHz)、バンド8(385〜500GHz)およびバンド10(787〜950GHz)の3種類を担当しており、バンド4とバンド8受信機は、2009年6月に専門家で構成される審査委員会で合格判定が得られた。
その後、両受信機はアルマに搭載され、今年6月22日にバンド4受信機が、続いて同月30日にバンド8受信機がそれぞれファースト・スペクトルの取得に成功した。
バンド4受信機が観測したのは「うみへび座W星(W Hya)」である(画像2枚目)。同天体は強い電波源として知られ、電波望遠鏡の性能を確かめるためによく観測されており、電波の強度を表すグラフ(画像3枚目)にもピークが見られる。また、バンド8受信機は、「いて座B2(Sgr B2)」を観測した。
スペクトルの取得に成功した2種類の受信機については、今後さらに詳細な性能評価が行われる。一方、受信機の開発・製造を行っている国立天文台 三鷹キャンパスの先端技術センターでは、受信機の量産化に向けて、現在2号機、3号機の製造を進めている。
ファースト・スペクトルの取得成功を受けて、受信機開発チームのリーダー 関本裕太郎氏は「出荷した受信機が順調に運用されていることをたいへん嬉しく思います。すべての受信機の完成まではまだまだ長い道のりですが、今回の知らせを励みに、日夜、製造に取り組んでいきます」とコメントしている。