複数の渦巻銀河に見つかった進化の痕跡
【2010年9月9日 MPIA】
わたしたちの天の川銀河が属する局部銀河群よりもさらに遠くにある複数の渦巻銀河に、小さな銀河が飲み込まれた痕跡が初めてとらえられた。今後、銀河の進化に関する理論の検証が進むかもしれない。
渦巻銀河は、小さな銀河を飲み込んで進化すると考えられている。飲み込まれる銀河の形は歪んでいき、やがて渦巻銀河の周りにはリボンのような巻き毛状の構造や星の流れが形成される。天の川銀河とアンドロメダ座大銀河を中心とした30個程度の銀河の集まりである「局部銀河群」では、1997年以来そのような痕跡の存在が知られている。
しかし、理論上予測されている「渦巻銀河が小さな銀河を飲み込んで成長する頻度」を確かめるための観測対象としては、矮小銀河は多く存在しているものの渦巻銀河が3つしか存在しない局部銀河群は小さすぎる。
そこで、独・マックス・プランク研究所およびスペイン領カナリア諸島・カナリア天文物理研究所のDavid Martínez-Delgado氏が率いる研究グループが、地球から約5000万光年の距離にある渦巻銀河の試験的なサーベイを行った。
その結果、局部銀河群より遠い複数の渦巻銀河に、小さな銀河が飲み込まれた痕跡が初めてとらえられた。渦巻銀河が接近すると伴銀河の形は重力の影響を受けて激しく変形し、数十億年のうちに、その残骸である巻き毛のような構造が検出されるようになる(画像1枚目)。
典型的な例を1つ挙げよう。画像2枚目の想像図にあるように、小さな銀河の形が引き伸ばされると渦巻銀河の周りに星の流れができ、さらに数十億年経つと渦巻銀河の一部となってしまう。研究の結果、主要な星の流れの質量は、渦巻銀河の質量の1〜5パーセントほどであることも示された。
銀河の進化に関するコンピュータ・シミュレーションでは、渦巻銀河と伴銀河の合体を示す証拠として、星の流れやその他の顕著な特徴が再現されている。その特徴とは、巨大な残骸である雲や銀河の円盤から噴き出すジェットのような構造である。このような形状が今回の観測でも見られたことで、この銀河の進化に関するコンピュータ・モデルの正当性が証明されたのである。
同研究グループでは現在本格的なサーベイを進めており、現在得られているシミュレーション・モデルのさらに詳細な検証を目指している。